4番サード

『4番サード』は、青山剛昌氏による高校野球漫画作品です。週刊少年サンデーの増刊号に1991年から1993年にかけて全6話が不定期連載されました。

物語の主人公は、長嶋茂雄と同姓同名であることから、港南高校野球部の4番サードに抜擢された長島茂雄です。彼は並々ならぬ努力をしますが、なかなか結果が出せず苦悩していました。そんなある日、彼は見覚えのない名園運動具店に立ち寄り、長嶋茂雄のように打ちたいと願います。店主は、どんな球でも打てるという「神様のバット」の存在を告げ、深夜0時に店を訪れるよう指示します。

しかし、長島が0時に店を訪れると、そこには読売ジャイアンツのユニフォームを着た男がいました。男は、神様からもらったというバットを長島に託し、去って行きます。そのバットには、ユニフォームのポケットにお金を入れないと威力が出ないという秘密がありました。

このバットを手に入れた長島は、甲子園予選に臨みます。彼は、この不思議なバットを駆使し、逆転打やサヨナラ打を連発、チームを甲子園へと導きます。甲子園でも活躍を続け、決勝へと進出します。

決勝戦の相手は大金高校。そのエースである稲尾一久は、今大会無安打無得点という驚異的なピッチングを見せていました。長島は8回裏、バットが折れるながらも内野安打を放ちます。しかし、折れたバットによって、彼は以前のように打てなくなってしまうのではないかと不安にかられます。

9回裏、2アウト満塁のピンチで打席に立った長島は、プレッシャーから立ち上がることができません。その時、スタンドから江夏豊が、試合後プレゼントするつもりだったバットを彼に手渡します。励ましの言葉をかけられた長島は、気持ちを切り替え、稲尾からサヨナラ逆転満塁ホームランを打ち、港南高校の甲子園初優勝を飾ります。

しかし、試合後、名園運動具店の店主から衝撃的な事実が明かされます。長島は、神様のバットの力ではなく、自分の実力で打っていたのです。ポケットに入れていたお金は、プレッシャーに負けないようにするための暗示であり、いわば授業料だったのです。

物語には、長島以外にも魅力的な登場人物が登場します。名園運動具店の店主は、長島と稲尾に、それぞれベーブ・ルースのバットと沢村栄治のグローブを渡した人物で、二人の対決を待ち望んでいます。江夏豊は、長島に好意を抱く港南高校の女子生徒で、彼の活躍を間近で見守ります。港南高校のメンバーや、ライバル校の選手たちも、個性豊かなキャラクターとして描かれています。

『4番サード』は、高校野球の熱戦はもちろん、友情や成長、そして不思議なバットを巡る物語を通して、人間の心の葛藤や強さを描いた作品です。野球ファンならずとも、その感動的なストーリーに心を奪われることでしょう。また、この作品は『名探偵コナン』とリンクしており、『名探偵コナン』43巻、44巻に収録されている「甲子園の奇跡!見えない悪魔に負けず嫌い」では、1年後の夏の甲子園決勝で港南高校と大金高校が再戦する様子が描かれています。さらに、『名探偵コナン』や『まじっく快斗』には、本作に登場する高校名が登場するなど、青山剛昌作品世界との繋がりも楽しめます。

単行本は少年サンデーコミックス、少年サンデーブックス、小学館文庫から刊行されています。

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