6 PIECES OF STORY

6 PIECES OF STORY / 10 PIECES OF STORY

シンガーソングライター尾崎豊が1986年に発表したキャリア初の映像作品『6 PIECES OF STORY』は、彼の初期を代表する楽曲群を収めたビデオクリップ集である。そして、時を経て2018年には、この作品に新たな映像を追加した拡張版『10 PIECES OF STORY』がリリースされ、長きにわたりファンの間で重要な映像作品として位置づけられている。

『6 PIECES OF STORY』

この作品は1986年7月21日に、当時の主要な映像メディアであったVHS、8ミリビデオ、ベータマックス、LDという4つの規格で同時にリリースされた。全編がビデオクリップで構成されており、映像監督は佐藤輝が担当した。収録されているのは、尾崎が10代の間に発表した初期の3枚のオリジナルアルバム、『十七歳の地図』（1983年）、『回帰線』（1985年）、『壊れた扉から』（1985年）から厳選された6曲である。

映像の表現としては、実際のライブパフォーマンスを捉えた迫力あるシーンが中心に据えられつつ、楽曲の世界観を抽象的に描くイメージ映像や、尾崎の日常の一コマを切り取ったスナップショットなどが多角的に用いられているのが特徴だ。また、各クリップの間には、尾崎自身の肉声による短いメッセージが挟み込まれており、作品全体にパーソナルでドキュメンタリー的な深みを与えている。

オリジナルの発売から約20年後の2005年8月24日には、初めてDVDフォーマットで再リリースされた。このDVD化に際しては、単なる映像のデジタル化に留まらず、当時の撮影風景を記録したメイキング映像や、監督である佐藤輝への新規インタビュー映像といった貴重な特典コンテンツが追加された。さらに、このDVD版にのみ収録されたボーナス映像として、楽曲「卒業」の未使用テイクを20以上繋ぎ合わせた「OUT-TAKES FROM GRADUATION」が収められており、本編のクリップとは全く異なる編集が施されている。

『6 PIECES OF STORY』収録曲と映像

各曲の作詞・作曲は尾崎豊。

十七歳の地図 (編曲: 西本明): 1984年3月15日、新宿ルイードで行われたデビューライブの映像がメインに使用され、楽曲の象徴である蜂などをフィーチャーしたイメージ映像が挿入されている。
卒業 (編曲: 西本明): 衣服を着たまま水中でもがく尾崎の衝撃的なシーンを中心に、ピアノ演奏や松葉杖姿など様々なカットで構成。ラストシーンが特に印象的。
Driving All Night (編曲: Yutaka Ozaki & Heart of Klaxon／コーラスアレンジ: 町支寛二): 1985年8月25日の大阪球場でのライブ映像が核。ノーヘルメットでバイクに乗るシーンやイメージ映像も加わり、イメージシーンでは楽曲が一時停止する演出がある。この音源はシングルカットもされている。
Freeze Moon (編曲: Yutaka Ozaki & Heart of Klaxon／コーラスアレンジ: 町支寛二): 尾崎に塗料を浴びせた様子を逆回転で再生するという、実験的な映像表現。
路上のルール (編曲: 西本明): 1986年12月26日に新潟県民会館で撮影。尾崎のローディーであった空田満が主要人物として登場するユニークな構成。
I LOVE YOU (編曲: 西本明): ライブ音源を使用し、精神病棟のような空間に佇む尾崎のイメージ映像が楽曲の内省的な世界観を表現している。

『10 PIECES OF STORY』

2018年4月25日には、『6 PIECES OF STORY』の収録曲に加え、新たに4曲分のビデオクリップを追加収録した拡張版『10 PIECES OF STORY』がリリースされた。こちらは現代の主要フォーマットであるDVDとBlu-rayで発売されている。

『10 PIECES OF STORY』追加収録曲

核 (編曲: 樫原伸彦): ニューヨークの街並みと、そこで生活する尾崎の足跡を追った映像。
太陽の破片（NEW VERSION） (編曲: 本多俊之): 新規に制作された映像クリップ。
僕が僕であるために (編曲: 町支寛二): 町支寛二が編曲を手掛けたバージョンの映像。
I LOVE YOU（NEW VIDEO CLIP） (編曲: 西本明): 『6 PIECES OF STORY』に収録されたものとは異なる、新しい映像による「I LOVE YOU」のクリップ。

また、『10 PIECES OF STORY』には特典映像として、1984年12月3日に秋田市文化会館で行われた公演の、未公開リハーサル映像が特別に収録されている。

初回限定盤は、全40ページに及ぶ撮り下ろしフォトブックが同梱され、三方背BOXに収められた豪華仕様で提供された。

スタッフ

これらの映像作品には、以下のスタッフが携わった。

監督: 佐藤輝
制作: テル・ディレクターズ・ファミリィ
制作協力: マザー・エンタープライズ
プロデューサー: 須藤晃
レコーディング、ミックス・エンジニア: 助川健
マネージメント: 福田信（マザー・エンタープライズ）
* カバー・デザイン、写真撮影: 田島照久

これらのスタッフワークが、尾崎豊の音楽世界を視覚的に具現化する上で重要な役割を果たした。

もう一度検索