60 誤判対策室

小説「60 誤判対策室」の概要

『60 誤判対策室』は、著者石川智健による法廷ミステリー小説で、初めは『小説現代』に連載され、その後、単行本として発表されました。作品は、不正義を追及する視点から冤罪の問題を取り上げており、読者に深い考察を促す内容となっています。

概要

本作では、国の方針に基づいて設立された「誤判対策室」を舞台に、さまざまな苦悩を抱えた登場人物たちが織り成す物語が描かれています。主人公たちであるベテラン刑事の有馬英治、若手弁護士の世良章一、そして女性検察官の春名美鈴は、死刑が確定した男性の冤罪を検証するため、様々な証拠を再調査し、真相を追求する仕事に取り組みます。

石川智健は、この物語における執筆動機を、親しい弁護士との対話を通じて冤罪についての実情を知り、衝撃を受けた体験にあると語っています。彼は、このテーマを通じて法律の世界の不条理を浮き彫りにし、読者に考えさせる契機を提供しています。

あらすじ

物語の進行は、誤判対策室に所属する有馬、世良、美鈴の3人が、死刑囚に関する冤罪を再調査するところから始まります。彼らが担当するのは、2011年に発生した母子殺人事件で、逮捕された古内博文が死刑判決を受けているというケースです。ある日、有馬は自らの行きつけの店で不安を感じさせる唯一の証言を耳にします。

この証言によると、酔った男の一人が、他の誰かの冤罪について話す場面がありました。その男の存在が、古内の事件とどのように絡んでいるのか、誤判対策室は再調査を進めることになります。調査を進める中で、さらなる証拠や新たな人物が浮かび上がり、物語は複雑に絡み合いながら進展します。

調査の過程で、誤判対策室のメンバーは古内の娘、矢野琴乃や彼女の夫、高虎を含むさまざまな人物と接触し、事件の背後に潜む真実に迫ります。緊迫した状況の中、古内に対する死刑執行の情報が入手され、彼らは時間に追われながら新たな証拠を求めて奔走します。

登場人物

• - 有馬英治: 60歳の刑事で、誤判対策室に異動し、厳しい状況の中で職務に励むようになります。
• - 世良章一: 30歳の弁護士で、有馬に憧れる若手。優れた職業意識を持つ持ち主です。
• - 春名美鈴: 32歳の女性検察官で、真剣な性格が特徴。意見の対立がしばしば生じます。
• - 古内博文: 56歳の死刑囚で、母子殺人事件の被告。罪を認める姿勢を示しています。

この小説は、ただのミステリーではなく、法と正義について深く考えさせられる貴重な作品です。ストーリーを通じて、冤罪や司法の不正について多くの問いを投げかけています。読者は登場人物たちの葛藤に共感し、最後には予想もしなかった結末を迎えることでしょう。

もう一度検索