690年代

690年代は、7世紀末から8世紀初頭にかけての10年間を指し、東アジアからヨーロッパに至るまで、世界各地で歴史的な出来事が数多く発生した時代でした。特に政治的な変動が著しく、新たな王朝や国家の成立、権力構造の変化など、後世に大きな影響を与えた出来事がいくつもありました。

東アジアでは、唐王朝において大きな転換期が訪れました。690年、高宗の皇后であった武則天が女帝として即位し、国号を周と改めました。これは中国史上、唯一の女性皇帝の誕生であり、唐王朝は一時的に断絶することとなりました。武則天の治世は、強大な権力と積極的な政策によって特徴づけられ、その影響はその後も長く続きました。

一方、日本においては、694年に持統天皇が藤原京へ遷都しました。これは飛鳥時代から奈良時代への移行を示す重要な出来事であり、政治・文化の中心が飛鳥から藤原京へと移ることで、社会構造や文化にも大きな変化がもたらされました。その後、697年には持統天皇が譲位し、孫の軽皇子（後の文武天皇）が即位しました。

ヨーロッパでは、696年にバヴァリアのテオド大公が司教ルペルトを招聘し、ザルツブルク周辺を領地として与えました。これはザルツブルク大司教領の起源となる出来事であり、後のヨーロッパにおける宗教と政治の展開に大きな影響を与えました。また、697年にはヴェネツィアが初めてドージェ（元首）を選任しました。これはヴェネツィア共和国の始まりを告げる重要な出来事であり、地中海世界におけるヴェネツィアの影響力拡大の端緒となりました。

イスラム帝国は、690年代を通じて北アフリカへの進出を続け、ほぼ全域を制圧しました。これはイスラム帝国の勢力拡大を示す重要な出来事であり、北アフリカの歴史に大きな影響を与えました。

さらに、698年には靺鞨人の大祚栄が震国（後の渤海）を建国しました。渤海は、朝鮮半島北部と満州にまたがる強大な国家として発展し、東アジアの国際関係に大きな影響を与えました。

690年代は、政治的な変動だけでなく、宗教や文化の面でも重要な出来事が多く発生した時代でした。ザルツブルク大司教領の創設はキリスト教の布教に大きく貢献し、一方、武則天の治世は中国文化に新たな一面を加えました。これらの出来事は、世界各地の歴史に大きな影響を与え、後の時代へと繋がっていきました。この時代の出来事を知ることは、世界の歴史を理解する上で非常に重要です。

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