9K52 (ミサイル)

9K52 ルーナ-M：ソ連が生んだ戦術弾道ミサイルシステム

9K52 ルーナ-Mは、ソビエト連邦が開発した戦術弾道ミサイルシステムであり、GRAU（ロシア国防省のミサイル・砲兵総局）によって命名されました。NATOコードネームは、"Free Rocket Over Ground"のバクロニムであるFROG-7として知られています。ZIL-135 8x8 軍用トラックをベースにした9P113 TELに9M21ロケットを搭載し、機動性と運用性を高めています。

概要

ルーナ-Mは、ZIL-135をベースとした9P113 TEL（Transporter Erector Launcher：輸送起立発射機）に9M21ロケットを搭載したシステムです。9T29輸送車両からロケットを再装填するための大型油圧クレーンを備えている点が特徴です。9M21ロケットは無誘導で、スピン安定によって飛行します。射程は約70km、CEP（半数必中界）は500〜700mとされています。ペイロードは550kgで、通常弾頭のほか、核弾頭や化学弾頭の搭載も可能です。

歴史

ルーナ-Mは、冷戦期から各地の紛争で使用されました。

キューバ危機: 1962年10月、9M21の初期型6発がキューバに持ち込まれ、核弾頭が搭載されていました。さらに70発の核弾頭が島内に保管されていました。
中東: ルーナはソ連の衛星国に広く配備されたほか、その他の地域にも輸出されました。イラクはイラン・イラク戦争後、エジプトと協力して9M21の改良を行い、射程を90kmに延長し、クラスター弾頭の搭載を可能にしました。この改良型はLaith-90と名付けられました。
ユーゴスラビア紛争: ユーゴスラビア紛争では、セルビア側がクロアチア側の都市へ多数のロケットを発射しました。
イラク戦争: 2003年のイラク侵攻において、米軍はイラク軍が使用するFROG-7を攻撃目標に指定しました。
リビア内戦: 2011年のリビア内戦では、イギリス空軍がカダフィ大佐支持勢力が使用するFROG-7を破壊しました。
シリア内戦: 2012年以降のシリア内戦では、シリア軍が反政府勢力支配地域に対しFROG-7を発射しました。

派生型

9M21B: 核弾頭搭載型（弾頭重量500kg）
9M21G: 弾頭重量390kgの型
Laith-90: イラクで開発された射程90kmのクラスター弾頭型

運用国

現在も以下の国で運用されています。

アルジェリア
アフガニスタン
ベラルーシ
エジプト
リビア
北朝鮮
ロシア（保管状態）
シリア
ウクライナ
イエメン

かつては以下の国でも運用されていました。

ブルガリア
キューバ
チェコスロバキア
東ドイツ
ハンガリー
イラク
クウェート
ポーランド
ルーマニア
南イエメン
ソビエト連邦
* ユーゴスラビア

レバノンへの供与の噂もありますが、確認されていません。

ルーナ-Mは、冷戦時代から現代に至るまで、世界の各地で使用されてきた戦術弾道ミサイルシステムです。その射程とペイロードの大きさから、紛争地域において大きな影響力を持ってきました。

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