9K720

イスカンデルミサイルシステム

9K720「イスカンデル」は、ロシアが製造した短距離軍用弾道ミサイルシステムであり、北大西洋条約機構（NATO）ではコードネーム「SS-26 Stone」として知られています。このミサイルは、固体燃料を推進力とし、移動式発射装置を使用して、迅速かつ柔軟な運用が可能です。古代マケドニアの英雄アレクサンドロス大王からその名前が付けられたこのシステムは、戦術的なレベルの紛争において重要な役割を果たすよう設計されています。

概要

「イスカンデル」の設計は、高精度で迅速に目的を狙うことができる点に特徴があります。このシステムは、敵の火力兵器や防空システム、指揮所、通信ノード、さらに軍隊の密集地帯をターゲットにし、通常弾頭を使用して精密攻撃を行います。ミサイルは自動で発射した後も、高い確率でミッションを完遂し、ミサイル発射準備・飛行中において故障が極めて少ない信頼性があります。

「イスカンデル」は、さまざまな種類の通常弾頭を搭載することができ、例えばクラスター弾頭や燃料気化弾頭、地下貫通弾頭などが用意されています。また、ロステックの会長セルゲイ・チェメゾフは、国内版には核弾頭搭載が可能であることを明言しました。

開発歴

1980年代初頭、ソ連は旧型の9K714「オカー」に代わる新たなミサイルを必要としていました。INF条約の影響により、旧式のミサイルが制限される中、代替となる9K720「イスカンデル」がロシアのコロムナ機械製作設計局（KBM）によって開発されました。このプロセスはソ連崩壊後も続き、1996年にはミサイルの初発射が行われました。

2005年からは大量生産が開始され、2006年にはロシア軍での運用が始まりました。「イスカンデルM」は最大射程500kmで、特に敵のミサイル防衛を攻略する能力に焦点が当てられています。2008年以降、ロシアはこのシステムをリトアニアやポーランド近くに配置する意向を示しました。

構成と性能

「イスカンデル」のミサイルは、特に改良された誘導装置を持っており、発射台から独自に標的を狙える特徴があります。このシステムは複数の車両からなる構成で、弾道ミサイルよりも低い軌道で飛行し、回避行動を行うことができます。これにより、敵の防空システムをかいくぐる能力が向上しています。

ミサイルの発射には特性があり、準備状態からわずか数分で発射可能です。運営には3名の乗務員が必要で、各発射装置には2発のミサイルが搭載可能です。これにより、従来型と比べてより効率的な攻撃が可能になります。

使用状況

「イスカンデル」は、2006年からロシア軍に正式採用され、2020年にはナゴルノ・カラバフ紛争や2022年のロシアのウクライナ侵攻に実際に使用されたとされます。また、アルメニアやアルジェリアが使用を検討し、ベラルーシやシリア、さらに北朝鮮も保有や導入に意欲を示しています。

イスカンデルは現在の戦場において有力な武器としての地位を確立しており、その高い精度と運用性から、他国にとっても重要な脅威となり得る存在です。

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