A-A'

萩尾望都「A-A'」シリーズ：SF漫画作品解説

萩尾望都によるSF漫画作品「A-A'」（エー・エーダッシュ）は、同名作品を表題とする作品集に収録されています。この作品は、遺伝子操作によって生み出された人類の変異種「一角獣種」をテーマにしたシリーズの一作であり、「4/4（カトルカース）」、「X+Y」（エックス・プラス・ワイ）と世界観を共有しています。「X+Y」は、第16回星雲賞コミック部門を受賞しています。

概要

A-A': 『月刊プリンセス』（秋田書店）1981年8月号掲載
4/4（カトルカース）: 『プチフラワー』（小学館）1983年11月号掲載
X+Y: 『プチフラワー』1984年7～8月号掲載

これらの作品は、『萩尾望都作品集 17 (A-A')』（小学館、1984年）に初収録され、その後、『A-A' - SF傑作選』（小学館叢書、1995年）、『A-A'』（小学館文庫、2003年）にも収録されています。

設定：一角獣種とは

21世紀初頭、宇宙航行のために開発された遺伝子変異種である一角獣種は、頭部に生える赤いたてがみに似た髪が特徴です。彼らは感情表現に乏しく、動きが鈍く、注意散漫な傾向があります。しかし、赤外線を感知する能力や、アルファ波を多く放出する脳を持つなど、特異な能力も持っています。ストレスに弱く、拒食症による餓死例も多く、種としては衰退の一途をたどっています。現代（23世紀頃）では、隔世遺伝によって稀にその特徴を受け継ぐ者が現れる程度です。

物語の舞台となる時代では、宇宙航行は実現し、太陽系内の惑星や衛星に人類が居住しています。「A-A'」では、太陽系近傍の恒星プロキシマやトリマンの惑星開発が進められています。開発スタッフは、事故に備えてクローン体を冷凍保存されており、死亡時にはクローンが任務を継続するシステムが採用されています。

「X+Y」では、火星建国から80年が経過し、都市はドーム内にありますが、ドーム外での活動も可能です。火星の大気圧を300ミリバールにするための研究も進められています。

あらすじ

A-A'

一角獣種の少女アデラド・リーは、クローンとして再生され、3年前に事故死したオリジナル・アデラドの記憶を受け継ぎます。プロキシマ第5惑星の開発スタッフだった彼女は、戸惑いながらも現場への復帰を希望します。しかし、恋人だったレグ・ボーンは、死の悲しみから立ち直れず、16歳の姿で現れた彼女を受け入れられずに苦悩します。惑星での生活を通して徐々に打ち解けていく二人でしたが、オリジナル・アデラドの死体発見を機に、レグは再びクローンのアデラドを拒絶してしまいます。

4/4（カトルカース）

木星の衛星イオに住む少年モリは、ESP能力の訓練中に、一角獣種研究の被験者である少女トリルと出会います。彼女のそばにいるとESP能力が増幅することに気づいたモリは、トリルに惹かれていきます。しかし、トリルの保護者である博士は、一角獣種を感情を持たない理想的な人間だと考えています。

X+Y

一角獣種の少年タクトは、火星環境の改造研究者として、火星の学会に参加します。そこで、アルバイトをしているモリと出会いますが、モリはタクトに亡くなったトリルの面影を重ねます。一方、タクトは血液検査の結果、自身が女性であることを知ります。

単行本情報

萩尾望都作品集 第2期 第17巻『11人いる!』小学館、1984年。「A-A'」、「4/4（カトルカース）」、「X＋Y」を収録。
『A-A' - SF傑作選』小学館叢書、1995年。「A-A'」、「4/4（カトルカース）」、「X＋Y」を含む短編集。
『A-A'』小学館文庫、2003年。「A-A'」、「4/4（カトルカース）」、「X＋Y」を含む短編集。

もう一度検索