A.R.B.

ARB ファースト・アルバム『A.R.B.』

1979年5月25日、日本のロックシーンに新たな息吹をもたらす一枚のアルバムが誕生しました。それが、伝説的なロックバンド、ARB（アレキサンダー・ラグタイム・バンド）の記念すべきファースト・スタジオ・アルバム、その名もバンド名を冠した『A.R.B.』です。この作品は、デビュー間もない彼らの初期衝動と、後の活動へと繋がる揺るぎないバンドの骨格を提示する、まさに原点というべき一枚です。

アルバム概要

『A.R.B.』は、全10曲で構成されています。楽曲の根幹を成す作詞と作曲は、主にバンドのボーカルである石橋凌が手掛けています。しかし、「悲歌（エレジー）」や「淋しい街から」といった一部の楽曲では、ENMAが作詞・作曲を担当しており、アルバムに多様な表現をもたらしています。編曲は、メンバー全員による共同作業としてARB自身が行っており、当時の彼らが持つライブ感溢れるパワフルなサウンドがそのままパッケージされています。

収録曲とシングルとの関連

このアルバムには、バンドがデビュー初期に発表したシングル曲とそのカップリング曲が複数収録されており、当時の彼らの代表的なレパートリーを知ることができます。

まず、バンドにとって初のシングルとして世に出た楽曲「野良犬」は、その荒々しいタイトルと情熱的なサウンドで、当時の日本のロックシーンに強い印象を与えました。この「野良犬」と、シングルのB面に収められていた「OH! PLEASE」は、本作『A.R.B.』の中核をなす楽曲群の一つです。

次に、彼らのセカンドシングルとしてリリースされた「ワイルド・ローティーン・ガール」も、アルバムに収録されています。この楽曲は、若々しい衝動とエネルギーを感じさせるナンバーであり、当時の彼らのライブにおいても重要な位置を占めていたと推測されます。そして、このシングルのカップリング曲であった「ジャックナイフ・ブルース」もまた、アルバムに収められており、初期ARBのブルースを基調とした側面を示しています。

これらのシングル曲に加えて、アルバムには「宝くじ」、「パブでの出来事」、「夜街」、「喝!」といった楽曲が収録されています。これらの楽曲を通して、石橋凌によるリアリティ溢れる歌詞と、バンドのタイトかつダイナミックな演奏が融合した、初期ARB独自の音楽世界が展開されています。社会への反骨精神や、都会の片隅で生きる人々の情感を描いたこれらの楽曲は、後の彼らの作品に通じるテーマを既に内包しています。

アルバムの意義

『A.R.B.』は、テクニックよりも初期衝動とメッセージ性を重視した、荒削りながらも瑞々しいロックアルバムです。この作品が発表された1979年は、日本のロックシーンが多様化し、新たな才能が次々と現れていた時代です。その中でARBは、飾り気のないストレートなロックンロールと、社会派とも言えるシリアスな歌詞で独自の存在感を確立しました。

本作は、彼らが日本のロック史において確固たる地位を築く上での重要な第一歩であり、彼らの音楽的ルーツや初期のバンドの勢いを理解する上で欠かせない作品と言えます。発売から40年以上が経過した現在でも、『A.R.B.』は日本のロック黎明期の貴重な記録として、そして何よりも純粋で力強いロックアルバムとして、多くの音楽ファンに聴き継がれています。ARBの長い歴史は、この一枚から始まったのです。

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