A4W (原子炉)

A4W原子炉：ニミッツ級原子力空母の心臓部

アメリカ海軍のニミッツ級原子力空母は、その圧倒的な航続力と運用能力で知られています。その原動力となるのが、A4W原子炉です。A4Wは、艦船の推進と艦内への電力供給を担う原子力推進システムの中核を成す存在です。

A4W原子炉の型式と設計

A4Wという型式名は、それぞれのアルファベットと数字が意味を持っています。「A」は航空母艦用、「4」はウェスチングハウス社における炉心設計の世代、「W」はウェスチングハウス社を示しています。

加圧水型原子炉であるA4Wは、Bettis Atomic Power LaboratoryとKnolls Atomic Power Laboratoryの共同設計、ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニー製造です。設計寿命は20年とされていますが、後述するA1G炉心の改良により運用期間は大幅に延長されています。ニミッツ級空母には、出力550MWのA4W原子炉が2基搭載され、約14万馬力の推進力と艦内の電力需要を満たす蒸気を生成します。

A1G炉心：燃料交換サイクルの革新

A4W原子炉で使用されているA1G炉心は、ゼネラル・エレクトリック社が開発した原子力空母用炉心です。A4W原子炉と合わせてA4W/A1Gと呼ばれることもあります。A1W原子炉で試験されたA1G炉心は、ニミッツ級のA4W原子炉に採用されました。

当初、A1G炉心の寿命は13年と推定されていましたが、実際には22～23年もの長期間に渡り燃料交換が不要であることが判明しました。この画期的な成果により、ニミッツ級空母は艦の寿命の半分に1回、燃料交換を伴うオーバーホール（RCOH）を行うだけで済むようになりました。

これは、A2W原子炉を搭載したエンタープライズ級空母と比較してRCOHの回数が少なく、多額の費用削減に繋がっています。RCOHは、原子炉の燃料交換や大規模な整備を行う大規模な作業であり、費用と時間がかかるため、その回数の削減は空母の運用コストと維持管理に大きな影響を与えます。A1G炉心の成功は、原子力空母の運用効率と経済性の向上に大きく貢献していると言えるでしょう。

まとめ

A4W原子炉とA1G炉心の組み合わせは、ニミッツ級原子力空母の驚異的な運用能力を支える重要な要素です。A1G炉心の長寿命化は、空母の運用コスト削減に大きく貢献し、アメリカ海軍の戦略的優位性を維持する上で重要な役割を果たしています。今後の原子力空母開発においても、これらの技術的進歩は重要な参考となるでしょう。

参考文献

Schank, J.; Smith, G.; Alkire, B.; Arena, M.; Birkler, J.; Chiesa, J. (2005年). MODERNIZING THE U.S. AIRCRAFT CARRIER FLEET ― Accelerating CVN 21 Production Versus Mid-Life Refueling (PDF) (Report). RAND Corporation.
National Nuclear Security Administration (2016年7月). Conceptual Research and Development Plan for Low-Enriched Uranium Naval Fuel (PDF) (Report).

もう一度検索