ACE3000

ACE3000 - 蒸気機関車の革新

ACE3000（エース3000）は、1980年代にアメリカ石炭事業団（ACE:American Coal Enterprises）によって開発された革新的な蒸気機関車です。この機関車は、アメリカ国内の鉄道が抱える動力問題に対応するために設計されました。特に、当時の第一次オイルショックの影響で急騰した原油価格により、鉄道会社は燃料費に多額の経費を費やしていました。そのため、石炭を利用した蒸気機関車を復活させる道が模索されました。

開発の背景

アメリカの鉄道は長大で全線を電化するのは多大なコストがかかります。そこで、ACEはディーゼル機関車に代わる新たな選択肢として、当時豊富に存在していた石炭を使用した蒸気機関車の開発を決定しました。設立当初から、その性能はディーゼル機関車と同等であり、運転の快適さも求められました。これにより、ACE3000の開発には燃焼効率の向上が必要とされ、アルゼンチンの技術者リビオ・ダンテ・ポルタが招かれました。

ポルタは、彼が開発した「ラ＝アルゼンティーナ」号を基に車輪配置を拡大し、新たなデザインでACE3000の設計を進めました。この蒸気機関車は、3000馬力級のディーゼル機関車に対抗することを目指し、様々な要素が取り入れられました。

ACE3000の特徴

ACE3000の外観は、ディーゼル機関車に似ていますが、実際はテンダー式の蒸気機関車というユニークな設計です。そのため、機関車とテンダーでは足回りが異なるのが大きな特徴です。給炭は自動制御で行われるため、機関助手なしで運行できるようになっています。運転台は視界確保のため前方に配置され、テンダー側にも運転台が設けられていました。

また、燃焼後の石炭灰をエアジェットで回収し、最大30トンの石炭で無停車800kmの走行が可能です。動力伝達は、従来通りピストンと主連棒によって行われ、特殊な配置によりハンマーブローも防止されています。

復水式の採用

給水設備の減少を受けて、ACE3000では復水式を採用しています。蒸気を再利用して水に戻し、給水の停車なしで運行できるように設計されています。ただし、復水器に伴うエネルギー消費の問題も指摘されています。

開発過程と課題

ACE3000の開発前に、実際の蒸気機関車のデータを収集するため、動態保存されていたチェサピーク・アンド・オハイオ鉄道の「No.614」を使用しました。その結果、同じ条件で走行するディーゼル機関車よりも経済的な運行が可能であることが確認されました。しかし、全軸が粘着重量に使えるディーゼル機関車に対し、ACE3000は構造上の不利があり、特にコスト面での課題も浮上しました。

ACE社内でも再検討が必要との声があり、新たな設計案が出されましたが、技術的な問題やコスト面での課題は解決されないままでした。結果として、1985年までに油価格が低下したため、ACE3000の計画は破棄され、実物は作られることはありませんでした。

結論

ACE3000は、1980年代に新しい動力源として期待された蒸気機関車でしたが、様々な技術的な課題や市場環境の変化によって、開発は実現しませんでした。この機関車の開発は、蒸気機関車の可能性を再評価する契機となり、また動力問題に対する新たなアプローチを示すものでした。

もう一度検索