AEO制度

AEO制度の概説

AEO制度（Authorized Economic Operator）は、国際物流の安全確保と円滑化を目的とした仕組みであり、特に2001年のアメリカ同時多発テロ事件を機に設立されたものです。税関当局は、セキュリティマネジメントと法令遵守を確立した事業者を認定し、税関手続きを簡素化する特典を与えることで、リスクの高い貨物に検査の重点を置くことが可能になります。

背景と目的

グローバル化により、国際物流は飛躍的に拡大しましたが、これに伴い、密輸などの不正行為が増加しています。この状況を受けて、税関の検査体制は強化が求められていました。しかし、貨物の急増に対して検査体制が追いつかない現実がありました。従来の増員対策だけではなく、より効率的な方法が必要とされていました。

AEO制度は、こうした背景を踏まえ、税関と事業者との協力を促進し、より安全な国際貿易を実現するために策定されました。事業者が内部プロセスを整備し、透明性を持つことによって、税関が信頼を寄せられるようになります。

SAFEフレームワーク

AEO制度は、WCO（世界税関機構）が提唱する「SAFE Framework of Standards」に基づいています。このフレームワークは、国際貿易におけるセキュリティの基準を定め、各国税関の協調によりセキュリティリスクを分散・低減します。SAFEの核心は、以下の4つの要素に集約されます:

1. 事前の電子貨物情報の調和
2. リスク管理アプローチに対するコミットメント
3. 非破壊探知機器を用いたハイリスクコンテナの検査
4. 基準を満たす事業者に対する税関のベネフィットの提供

これらの要素に基づき、事業者は内部プロセスを適切に実施していることを証明する必要があります。適切な情報管理と作業手順が守られなければならず、物品と書類の一致が不可欠です。さらに、作業が規定の手順に従い、適正な形で実施される必要があります。

AEOの認定プロセス

事業者がAEOとして認定を受けるためには、税関に対して内部管理が適切に行われていることを立証する必要があります。税関は、認定を受けた事業者については、貨物検査を省略することができるため、物流のコスト削減や時間短縮が実現できます。

ただし、認定を一度受けることで永続的に維持されるわけではありません。事業者が不適切な管理を行った場合には、認定が取り消されることもあります。例えば、2017年には郵船ロジスティクスが通関業法違反により自発的に認定を返納した事例があります。

各国のAEO制度と相互承認

AEO制度は、世界中で広がりを見せており、2019年には84カ国が制度を導入しています。国によって制度の具体的な内容や認定基準には差異があります。例えば、カナダではPIP（Partners in Protection）、アメリカではC-TPAT（Customs-Trade Partnership against Terrorism）など、各国独自の制度も存在しますが、全体としてはSAFEフレームワークに準拠しています。

AEO制度の究極的な目標は、各国の制度の相互承認です。この認証が実現すれば、一国で認定を受けた事業者が他の国でも認められ、国際的な物流がさらに安全で効率的になることが期待されています。

日本は、特にアメリカやEUとの相互承認を進めており、物流における国際的な信頼性の向上を図っています。これにより、日本の事業者は海外と連携しながら、安全な貿易の実現に貢献できるでしょう。

結論

AEO制度は、国際貿易におけるセキュリティを強化するだけでなく、物流の円滑化とコスト削減にも寄与します。事業者が主体的に取り組むことで、より安全な国際貿易の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

もう一度検索