AGS (F1)

Automobiles Gonfaronaises Sportives (AGS) - F1参戦の歴史とその後

1986年から1991年にかけてフォーミュラ1世界選手権に参戦したフランスのレーシングチーム、AGS（Automobiles Gonfaronaises Sportives）。その歴史は、南フランスの小さな町ゴンファロンで始まりました。500ccシングルシーターマシンの製作からスタートしたチームは、F3、国際F2、そして国際F3000とステップアップを重ね、F2時代にはチャンピオンを獲得するなど、着実に実力を高めていきました。

F1への挑戦 - 栄光と苦闘の軌跡

1986年、AGSはスポット参戦でF1の舞台に飛び込みます。しかし、ルノーの旧型マシンをベースとしたJH21Cは重量過多で苦戦を強いられ、予選落ちやリタイヤが続きました。

1987年にはフル参戦に挑みますが、資金難とマシン開発の遅れが大きな壁となりました。ドライバーはパスカル・ファブルからロベルト・モレノへと交代。モレノは最終戦オーストラリアGPで6位入賞を果たし、チーム初となる1ポイントを獲得しました。

1988年も1台体制で参戦。新車JH23はコンパクトな設計でしたが、完走率の低さと資金不足は依然として課題でした。

1989年は2台体制へ。ドライバーにはベテランのフィリップ・ストレイフと若手のヨアヒム・ヴィンケルホック、ガブリエル・タルキーニが起用されました。タルキーニの活躍で久々のポイントを獲得するも、資金難は深刻さを増し、新型マシンの開発も遅れました。

1990年にはチーム体制の刷新を図りますが、資金難は改善せず、予選落ちが続きました。メインスポンサーとの関係も悪化し、チーム代表の交代劇も発生。シーズン後半にはマシンの性能が向上するも、目に見える成果は限られていました。ラルースとの合併話もありましたが、実現しませんでした。

1991年、AGSは150億円もの負債を抱えながら、奇跡的にF1への参戦を継続しました。しかし、深刻な資金難はチームを蝕み、ドライバー交代劇が頻発。開幕戦アメリカGPでは、メカニックはわずか9人。給料未払い、航空券の立て替えなど、チームの悲惨な状況を物語るエピソードが数多く残されています。資金調達に失敗し、ヨーロッパラウンド終了後、資金不足によりシーズン途中にF1から撤退を余儀なくされました。

F1撤退後 - 新たな挑戦

F1撤退後、AGSは残ったマシンを活かし、「F1レジャー」事業を立ち上げました。一般人がF1マシンを運転できるプログラムを提供し、現在も営業を続けています。

元チーム代表のシリル・ド・ルーブルは、その後リジェチームのオーナーに就任しますが、横領容疑で逮捕されるという波乱の人生を送りました。

AGSのF1参戦は、成功と挫折が入り混じったドラマチックなものでした。資金難という厳しい環境の中、懸命に戦い続けたチームの軌跡は、モータースポーツ史に深く刻み込まれるでしょう。彼らの挑戦は、決して無駄ではなかったはずです。

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