AH-IV

AH-IV豆戦車：第二次世界大戦を駆け抜けた小型装甲車両

AH-IVは、チェコスロバキアのČKD社が開発した豆戦車です。第一次世界大戦の経験を踏まえ、より実用的な装甲車両として設計されました。この戦車は、複数の国に輸出され、それぞれの戦場で異なる役割を果たしました。

開発の背景と特徴

ČKD社は、先行して開発されたvz.33豆戦車の反省から、AH-IVでは火力の強化と周囲の視察能力の向上を目指しました。全周囲旋回可能な砲塔を備え、2挺の機関銃を搭載することで、歩兵支援や偵察任務に適した性能を持たせました。

車体は、12mmと6mmの装甲板をリベット接合で組み立てています。運転席は右側に配置され、防弾ガラスと装甲シャッターを備えた観察ポートから周囲を監視します。搭載弾薬は3,700発で、無線機は装備されていませんでした。エンジンは、プラハ社製の3.468L水冷6気筒ガソリンエンジンで、55馬力（41kW）の出力を発揮します。このエンジンは戦闘室の後部に配置され、ドライブシャフトを介して前方の変速機に動力を伝えます。冷却空気は、砲手と運転手のハッチから取り込む構造で、車内の発射ガスを排出する役割も兼ねていました。しかし、寒冷時には乗員にとって過酷な環境になったという欠点も存在しました。

トランスミッションはプラガ・ウィルソン製のセミオートマチックで、前進5段、後進1段でした。サスペンションと転輪は、38（t）戦車のものを小型化したものが採用され、接地圧は0.5kg/cm2でした。これにより、1.5mの溝を越え、0.5～0.6mの高さの障害物を乗り越え、0.8mの段差を登ることが可能でした。

各国での運用

AH-IVは、その優れた性能から、いくつかの国に輸出されました。それぞれの国で仕様が異なり、運用状況も様々でした。

イラン

イランは、AH-IVの最初の顧客でした。1935年に50輌とプロトタイプを注文し、翌年に到着しました。このバージョンは、シリーズの中で最も軽量で、接地圧も0.45kg/cm2と低く、ZB vz.26とZB vz.35の機関銃を装備していました。追加で100輌と300輌の発注がありましたが、第二次世界大戦の勃発により納品は実現しませんでした。

ルーマニア

ルーマニアは、1936年に35輌のAH-IV-Rを注文しました。1937年にルーマニアに送られましたが、仕様に適合しないとして一度は受領を拒否されています。その後、必要な変更が加えられ、1938年4月に正式に納入されました。ルーマニアはAH-IV-RをR-1としてライセンス生産する計画もありましたが、決済上の問題から生産図面が遅れ、最終的には試作車1輌のみが製造されたにとどまりました。ルーマニア軍では、バルバロッサ作戦からウィーン攻撃まで、東部戦線で運用されました。

スウェーデン

スウェーデンは、Stridsvagn m/37（Strv m/37）として48輌を導入しました。スウェーデン向けには、装甲が15mmに強化され、エンジンもより強力な4.39L、85馬力（63kW）のボルボFC-CKD水冷6気筒ガソリンエンジンに変更され、最も重いバージョンとなりました。全長3.4m、幅1.85m、高さ1.96m、最高速度60km/h、航続距離200kmというスペックを有していました。武装はブローニングM1919重機関銃のスウェーデン版であるKsp m/36を搭載し、キューポラを備えた砲塔には無線機と3,960発の銃弾が搭載されました。

エチオピア

第二次世界大戦後、エチオピアは1948年に20輌のAH-IV-Hbを購入しました。エチオピア向けはリベット接合構造で、4.94L、65馬力（48kW）のタトラ114空冷ディーゼルエンジンを搭載し、最高速度42km/h、航続距離200kmを実現しました。重量3.93t、全長3.2m、幅1.82m、高さ1.73m、接地圧0.48kg/cm2というスペックを持ち、1mの深さの河川を渡河することが可能でした。

第二次世界大戦後の活躍

第二次世界大戦後も、生き残ったAH-IVは各国の戦場で使用され続けました。特にルーマニア軍の車両は、東部戦線で活躍し、最後に生き残った20輌が、戦後にエチオピアに売却され、1980年代まで使用されたという記録が残っています。

参考文献

Axworthy, Mark; Scafes, Cornel; Craciunoiu, Cristian (1995). Third Axis, Fourth Ally: Romanian Armed Forces in the European War, 1941-1945. London: Arms and Armour.
Kliment, Charles K.; Francev, Vladimír (1997). Czechoslovak Armored Fighting Vehicles. Atglen, PA: Schiffer.

外部リンク

Strv m/37の修復中の写真
イランの車両の写真
ルーマニア軍のR-1の写真
ルーマニアの装甲車両に関する写真シリーズ
* スウェーデンの装甲車両に関する写真シリーズ

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