AIM-54 フェニックス

AIM-54 フェニックス

AIM-54 フェニックスは、アメリカ海軍のF-14 トムキャット戦闘機に搭載されるために開発された、長距離空対空ミサイルです。このミサイルは、冷戦時代のソビエト連邦軍の大型爆撃機や巡航ミサイルに対抗するために設計されました。クラシックなデザインのフェニックスは最大で6発を一度に搭載可能で、運用面でも高い柔軟性を持っていました。

開発の経緯

1950年代後半、アメリカ海軍は、航空機搭載の長距離ミサイル計画を進めていました。当初はAAM-N-10イーグルと呼ばれるミサイルが研究されていましたが、1960年にその計画は中止されました。一方、アメリカ空軍ではAIM-47ミサイルが開発されていましたが、こちらも実戦配備には至りませんでした。

その後、アメリカ海軍と空軍の計画は統合され、新たにフェニックスの開発が始まりました。1963年には当初の名称からAIM-54に変更されました。F-14の初飛行は1970年で、1974年から部隊配備が開始されています。フェニックスは、もともとはソ連からの核攻撃から海軍の空母艦隊を守る目的で設計されていたため、長射程が求められましたが、実戦ではその機会がほとんどありませんでした。2004年には正式に退役しています。

設計と運用

AIM-54の弾頭は通常の爆薬であり、核弾頭ではありません。AN/AWG-9という火器管制レーダーが装備され、最大24の目標を同時に追尾する能力があります。ただし、全弾搭載した状態での艦への着艦時には、安全のために数発を投棄する必要があり、実際には4発以下の搭載が推奨されていました。

全天候対応が可能であり、強力なジャミングを受けても運用できる能力に優れています。また、近接信管は複合型で構成され、様々な環境下での運用に対応しています。

各型

AIM-54は複数のバリエーションがあります。

• - AIM-54A: 1974年から運用が開始され、中間誘導にはセミアクティブ・レーダー・ホーミングを採用。
• - AIM-54B: 1977年に登場した簡易モデルで、コスト効果の理由からキャンセルされました。
• - AIM-54C: 1986年から運用開始。電子機器がアップグレードされ、対電子妨害能力も強化されました。
• - AIM-54C+: F-14D向けに改善されたモデル。温度変化への耐性なども向上しています。

各型は弾頭の種類によって色分けされており、黄色は実弾、青色は訓練弾、茶色はモーターのみ装備です。これらの改良によって高い信頼性が実現しました。

発射記録

実戦におけるAIM-54の効果は限定的でした。アメリカ海軍の記録によると、1999年にはイラクのMiG-25に対して2発が発射されましたが、いずれも撃墜には失敗しました。イラン空軍でも同様にいくつかの発射が行われましたが、その成績には諸説あります。中には一部成功が報告されていますが、証拠が乏しい声も多く、全体的に見れば多くの未確認の事例が存在します。

結論

AIM-54 フェニックスは、その開発背景や設計において多くの技術的特長があり、航空戦における重要な位置を占めていました。しかし実際の戦争での運用は限られ、多くの課題も抱えていました。それでも歴史的な意義と、戦闘機F-14との連携において重要な役割を果たしてきたことは間違いありません。

もう一度検索