ANGEL VOICE (漫画)

ANGEL VOICE

『ANGEL VOICE』は、古谷野孝雄によって描かれた日本のサッカー漫画です。『週刊少年チャンピオン』（秋田書店）にて、2007年21号から2014年42号まで連載されました。

作品のユニークな特徴として、通常の縦長ページだけでなく、意図的に横長のページを使用する演出が見られます。これは扉絵に限らず、作中の重要なシーンにも効果的に用いられています。また、単なる主人公チームの物語に留まらず、対戦相手のチームにもそれぞれ背景やエピソードが深く掘り下げられている点も特色と言えるでしょう。

あらすじ

物語の舞台は千葉県にある市立蘭山高校、通称「市蘭」。かつて「県内最強軍団」として恐れられていた彼らでしたが、それはグラウンドでの話ではなく、ケンカの強さでの悪名でした。荒れ果てたサッカー部を立て直すべく、実績を持つ黒木鉄雄が監督として招かれます。彼は、その評判から「中学最強」（これも主にケンカで）と呼ばれた新入生4人を軸に、チームの再生を目指します。しかし、そんな寄せ集めの市蘭サッカー部は、冬の高校サッカー選手権県予選でベスト4に進出しなければ廃部という厳しい条件を突きつけられてしまいます。

登場人物

主に市蘭高校の主要な人物を紹介します。

黒木 鉄雄（くろき てつお）: 監督（顧問）。元プロ候補の実力者でしたが怪我で断念。荒廃した市蘭サッカー部を立て直すため、不良の新入生たちをスカウトし、情熱を失いかけていた自らの指導方針を見つめ直しながらチームを率います。
成田 信吾（なりた しんご）: 1年生FW、背番号11。「中学最強」の1人。正義感が強く真っ直ぐですが、喧嘩っ早いトラブルメーカー。サッカー経験は浅いながら、一級品の足の速さと驚異的な跳躍力を持ち、ヘディングを得意とします。飽きっぽい性格ながら、ライバルの存在に触発され成長していきます。
所沢 均（ところざわ ひさし）: 1年生GK、背番号1。「中学最強」の1人。温厚で思慮深い性格。サッカー未経験ながら、高い基本能力と柔軟な思考で地道な練習を重ね、驚異的な成長を遂げます。ユースチームからの誘いを断り、市蘭でのプレーを選択します。
乾 清春（いぬい きよはる）: 1年生MF（トップ下）、背番号10。「中学最強」の1人。中学時代にナショナルトレセンに選ばれた天才肌ですが、過去の経験から人間不信になりサッカーから離れていました。無口でぶっきらぼうですが、面倒見の良い一面も持ち、ブランクを乗り越え高い技術を発揮します。
尾上 輝久（おがみ てるひさ）: 1年生MF（右サイドハーフ）、背番号9。「中学最強」の1人。サッカー未経験。寡黙で荒々しい性格ながら、母親想い。基本に忠実で向上心が高く、正確なミドルシュートを得意とします。
百瀬 宏一（ももせ こういち）: 2年生MF（右ボランチ）、背番号7。チームのキャプテン。真面目でフットサル経験あり。ケンカは弱いですが、チームをまとめる精神的な強さと並外れたキャプテンシーを持ちます。
脇坂 秀和（わきさか ひでかず）: 2年生DF（右センターバック）、背番号6。元不良グループ。サッカー部の雰囲気に惹かれ参加。人の目を気にしがちな性格ですが、葛藤しながら着実に成長し、ディフェンスラインの統率を担うようになります。
高畑 麻衣（たかはた まい）: 1年生マネージャー。元バスケ部員で大怪我を機に転身。ケンカが苦手でしたが克服しようと努力し、「天使の歌声」で部員たちを落ち着かせます。
* 尋猶 誠一（ひろなお せいいち）: 3年生。荒れていたサッカー部の元ボス。ボールに誰も触れさせない掟を作っていましたが、その真意はサッカー部を守るためでした。再生した部を守るために単身不良グループと対峙し、退学を選びます。

市蘭のプレースタイル

市蘭の基本システムは4-5-1で、成田を頂点とする1トップですが、乾が積極的に攻撃に絡むため実質は1.5列目の役割を担います。百瀬と共に攻守の要としてチームを支えています。夏の合宿で徹底的な走り込みを行った結果、豊富な運動量を活かした「走るサッカー」がチームカラーです。初心者揃いのチームが強豪に挑むための戦術として、黒木監督が採用しました。個人技では乾が群を抜いており、百瀬との経験者ならではの連携も見られます。選手間のコミュニケーションは少ないながらも、それぞれの役割と目標が明確なため、試合中の意思疎通は成立しています。

作品の評価

『ANGEL VOICE』は、荒廃した部活動が再生していく王道の青春スポ根ストーリーに、不良たちの成長や人間関係のドラマを織り交ぜることで、熱く泥臭い魅力を放っています。各キャラクターの内面や背景が丁寧に描かれており、特に登場人物たちの成長と絆が見どころです。

単行本は秋田書店より、少年チャンピオン・コミックスとして全40巻が刊行されています。

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