ANZUS

ANZUS条約とは

ANZUS（オーストラリア・ニュージーランド・アメリカ合衆国安全保障条約）は、1951年にオーストラリアとニュージーランド、さらにはオーストラリアとアメリカ間で締結された軍事同盟です。この条約の目的は、太平洋地域で生じる軍事的問題に対する集団的自衛を促進することにあり、今日では世界的な紛争への対応にも関連しています。

この条約では、三国のいずれかが武力攻撃を受けた場合、他国にも直接的な危険が及ぶことが前提となっています。また、共通の脅威に対し協力して行動することが求められており、具体的には外相委員会が設置され、協議を行う仕組みが整備されています。

冷戦時代の背景と条約の設立

ANZUS条約は、冷戦の最中の共産主義の脅威に対する集団的な対応策として位置付けられています。アメリカは、1949年から1955年にかけて締結された一連の条約の中で、このANZUSを形成しました。特に、ニュージーランドは1986年に自国の領海内に非核地帯を設けたことにより、一時的にANZUSから脱退しましたが、2012年のアメリカの軍艦訪問禁止の解除を受けて、緊張関係は和らぎました。

アメリカは軍艦に核兵器が搭載されているかどうかを明らかにせず、ニュージーランドは外交政策の一環として非核地帯を維持しています。それでも、ニュージーランドは2007年にANZUS条約の主要な分野に関して再度協力を進める姿勢を示しています。

条約締結に至る外交的経緯

ANZUS条約締結以前、1949年3月にNATO（北大西洋条約機構）が設立されると、アジア・オセアニア諸国にも同様の軍事同盟を構築しようとする動きが見られました。特に共産主義勢力、例えば中国や北朝鮮の脅威に直面する国々が同盟を考えましたが、アメリカによる拒否に遭いました。そこでオーストラリアが提案した、アメリカと英連邦諸国を結ぶ同盟が浮上しました。

外相のパーシー・スペンダーは、第二次世界大戦での経験から、イギリスに代わってアメリカとの関係を強化する必要があると感じていました。しかし、提案はカナダ、イギリス、インドを含む英連邦国々から反対されました。当時のイギリスが持つ植民地に対するアメリカの嫌悪感もあり、軍事同盟の範囲がイギリス植民地に及ぶことはありませんでした。

アメリカは、東南アジアや東アジアの反共諸国を広く含む同盟は戦争のリスクを高めるとして懸念を示しましたが、1950年の朝鮮戦争でオーストラリアが迅速に軍事支援を提供したことにより、オーストラリアとの同盟に大きな価値を見いだすようになりました。その結果、オーストラリアは加盟国を3カ国に制限し、同盟の範囲を限定することで事態を収束させました。

条約の正式署名

1951年2月には、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの外相会談が開かれ、オーストラリアの提案に基づく条約案が草案されました。アメリカの意向も反映されたこの条約案は、その後7月に公表され、9月1日に署名が行われました。このタイミングは、サンフランシスコ講和会議の直前であったため、国際的にも重要な位置を占めています。

現在のANZUSとその意義

2024年現在もANZUS条約は、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカの安全保障において重要な枠組みとなっています。ANZUSは、地域的な安全保障を確保するための共同戦略を形成し、国際的な脅威に対抗するための重要な手段として機能し続けています。

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