AN/SLQ-25

AN/SLQ-25 ニクシー

AN/SLQ-25ニクシーは、アメリカのアルゴンST社によって開発された曳航型の対魚雷用ソナーデコイです。このシステムは、1950年代から続く海軍の魚雷対策の一環として、魚雷から艦船を保護するための機能を持ちます。

概要

アメリカ海軍は、魚雷による脅威に対抗するため、接近する魚雷に対して音響妨害を行う技術を発展させてきました。最初の曳航型デコイとして、T-Mk.6ファンフェアが運用されました。その後、このシステムの後継として1970年代にニクシーが誕生しました。評価が1970年の12月に終了し、1972年には初期の作戦能力を獲得、1974年には量産が開始されました。

ニクシーは、音響曳航体TB-14と艦上の信号生成装置から構成されています。TB-14はその形状から「フィッシュ」とも呼ばれ、直径約15センチ、長さ約94センチ、重さは約20キログラムです。これを曳航することで、目標となる魚雷に対して混乱を引き起こします。艦艇の艦尾から曳航と信号送信用のケーブルを使用し、艦船よりも大きなスクリュー音やエンジン音を発生させることで、敵魚雷を誤誘導します。

システムの進化

1988年には、SLQ-25の強化型であるSLQ-25Aが発表され、さらに1990年代以降にも改良型が登場しました。これらの改良により、魚雷を探知する機能が加わり、信号処理装置が魚雷の分類や位置特定を行えるようになりました。

2015年の時点で、最新型のSLQ-25Cは曳航体やそのためのケーブルを使用する巻上機が装備されており、通常の運用では、2基の曳航体のうち1基が最長300メートルのケーブルで曳航されます。接近する魚雷の発するホーミング音波を受信し、艦上で情報処理を行うことで、魚雷の種類や位置を特定し、脅威の評価を行います。この情報は、戦闘指揮官にとっての重要な資料となり、必要に応じて回避行動や音響デコイの発射が実施されます。また、受信した魚雷のホーミング音波は艦上で増幅され、曳航体から魚雷に送信されます。敵魚雷がこの信号を艦からの反射波として受け取ると、艦ではなく曳航体に向かうように誘導されます。

万が一、曳航体が魚雷に命中して破損した場合には、予備の曳航体が使用される仕組みとなっています。このように、ニクシーは高い柔軟性と信頼性を持って運用されています。

運用と実績

2013年時点で、ニクシーシステムは400以上のセットが生産されており、世界的なソフトキル型魚雷防御システムの標準として広く認識されています。特に1982年のフォークランド紛争では、イギリス海軍の空母「ハーミーズ」が誤って自軍の魚雷に狙われた際、ニクシーの曳航体が魚雷を誘引して爆発を防ぐという実績があり、その防御効果が実証されました。

また、海上自衛隊もニクシーを導入しており、国産のできた曳航具の後継として運用されています。あさぎり型やむらさめ型の艦艇で搭載され、相手の魚雷からの防御力を強化しています。

このように、AN/SLQ-25ニクシーは長年にわたり運用され、多くの改良が施され続けることで、現代の海上戦闘における重要な防御手段となっています。

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