ARL V 39

ARL V 39: フランスの試作戦闘車両

ARL V 39は、フランスが第二次世界大戦に向けて開発した試作戦闘車両であり、特に自走式突撃砲の要求に基づいて設計されました。この車両は、一般にはARL 1940 V939 40という名称でも知られており、わずか2両が完成しましたが、実質的な量産には至りませんでした。ARL 39はその特異な安定性と火力から、設計当初から注目を集めていましたが、開発途中でフランスがドイツに占領されたため、その運命を全うすることはありませんでした。

開発の背景

ARL V 39の開発は1935年の中頃に始まりました。当時、フランス軍は新しい自走式の突撃砲を必要としており、これを実現させるために既存の戦車を基にした設計が検討されることになりました。この背景には、フランス軍が歩兵支援の強化を必要としていたことがあります。ソミュア社は中型騎兵戦車ソミュアS35をベースとした車両、SAu 40を開発し、ARL社は重戦車シャールB1の部品を流用してARL40の設計に取り掛かりました。結果的にARL V 39は、ARL40計画の一環として開発された唯一の試作車両となりました。

最初の試作車両は1938年6月に完成し、陸軍による試験は1939年に行われました。この試験は成功を収め、量産計画へと移行する許可が下りました。最初の発注数は72両で、その中には24両の非武装指揮車両が含まれていました。

開発の進展と問題

しかし、1940年5月に始まったフランスに対するドイツの侵攻により、軍事状況が急激に変動しました。ARL V 39の試作車両はまだ十分な戦闘能力を持っていなかったため、すぐに実戦投入ができる状態ではありませんでした。結局、2両の試作車両はモロッコに移送され、トンネルに隠されました。これらの車両がどのような運命をたどるのかは不明ですが、フランスの占領によってARL40計画は凍結されることになりました。

一方、ソミュア社によるSAu 40計画も同様に進められ、36両の発注が認められましたが、この計画もARL V 39同様に、戦局の変化によって中止されることとなりました。最終的にARL V 39はその任務を果たす前に歴史の舞台から姿を消すことになってしまったのです。

兵装の特徴

ARL V 39には、ピュトー工廠製の75mm高初速APX砲が搭載されています。この砲は1929年式要塞砲の改修版で、榴弾は400m/s、徹甲弾は570m/sの初速を持っていました。貫通力のテストでは、射程1,000mにおいて50mmの貫通力を示し、射程2,000mまでの砲撃が可能な2種類の照準装置も備えています。

登場作品

ARL V 39は、ゲーム『World of Tanks』に登場するフランス駆逐戦車としてプレイヤーに使用されることがあります。その特異なデザインや歴史的背景も相まって、ゲームの中での人気を集めています。

結論

ARL V 39は、フランス陸軍が戦局の変化により実現しなかった理想の自走式突撃砲の一例として、その開発の試行錯誤や、兵器としての可能性を示す貴重な遺産といえるでしょう。

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