ASTRO-G

ASTRO-G: VSOP-2プロジェクトとその経緯

ASTRO-Gは、日本の国立天文台（NAOJ）と宇宙航空研究開発機構（JAXA/ISAS）が共同で開発していた電波天文衛星です。この衛星は、国際的な天体観測プロジェクトである宇宙VLBI計画「VSOP-2」の一部として位置づけられていました。VSOPは、日本が誇る宇宙電波観測技術を基にしたプロジェクトであり、先代の衛星「はるか」によって宇宙からの電波観測技術の有効性が実証されました。VSOP-2では、さらに高い観測精度と新たな観測対象を探求することを目指されていました。

開発の背景

ASTROという名称は「Astronomy」の略であり、宇宙科学研究所の開発コードネームの一部です。このプロジェクトは、宇宙空間においての天体観測を進めるための重要な試みでした。ASTRO-Gは、実際には9mの大口径反射鏡を持つ電波望遠鏡として設計され、観察の精度を劇的に向上させることを目指しました。特に、次世代の電波観測においては、観測波長をミリメートルオーダーに対応させる必要があり、そのための革新的な技術開発が進められていました。

VSOP-2の目的と狙い

VSOP-2の主な目的は、ハイレゾリューション電波天文学を実現することでした。前作の「はるか」が宇宙VLBI技術の実証衛星であったのに対し、VSOP-2では、より多くの観測目標を設定しました。例えば、活動銀河核に存在するブラックホールの降着円盤や、星形成領域、さらにはマイクロクェーサー、超新星、重力レンズ天体等を観測し、これらの構造や物理現象を解明することを目指しました。

地球からの長い距離を越えて観測するため、ASTRO-Gは地球を回る衛星として高い周波数での観測を行うという新たな挑戦を伴っていました。特に、直径3万kmのスケールでの観測が可能になることが見込まれ、これは前作から10倍の精度を確保するものでした。

開発課題とプロジェクトの中止

しかし、開発の過程で高精度の展開式アンテナに関する技術的課題が次々と明らかになり、プロジェクトの経済的な問題も表面化します。2011年には、計画の中止が発表され、宇宙科学研究所はASTRO-Gの開発を断念せざるを得ませんでした。これは、達成可能な精度を考慮した場合、当初の科学的目標を達成することが極めて困難となったためです。

ASTRO-Gの計画は、一時の期待を寄せられ、多くの電波天文学者による支持を受けていましたが、最終的には技術的な実現可能性と経済性が調和せず、開発に向けた道は閉ざされてしまいました。このように、宇宙科学の先端を行く試みであったVSOP-2計画は、その全盛を迎えることなく歴史の中に埋もれてしまいます。

参考文献

ASTRO-Gの開発過程や背景については、多くの文献や公式情報が存在しています。国立天文台やJAXAの公式サイトでは、プロジェクトの詳細や関連する研究成果についても知ることができます。

もう一度検索