AT&T ビル (ナッシュビル)

AT&Tビル：ナッシュビルの象徴、バットマンビル

AT&Tビルは、アメリカ合衆国テネシー州の州都ナッシュビルにそびえ立つ超高層ビルです。かつてはサウス・セントラル・ベル・ビル、ベルサウス・ビルとも呼ばれていましたが、その特異な形状から「バットマンビル」という愛称で広く知られています。

概要

1994年8月に竣工したこのビルは、テネシー州で最も高い建築物であり、高さは617フィート（188メートル）、33階建てです。オフィス・タワーとして、約2,000人の人々がここで働いています。

設計

AT&Tビルは、3番通り北と2番通り北の間のコマース通り沿いに位置し、2.7エーカー（11,000平方メートル）の敷地を占有しています。エントランスホールは3フロアにわたる温室アトリウムとなっており、地下9階には1,300台もの自動車を収容できる巨大駐車場を備えています。

その最大の特徴は、何と言ってもその独特な形状です。このデザインは、当時のテナントであったサウス・セントラル・ベルの意向を反映し、同社の個性を外観に表現したものだとされています。設計を担当したアール・スウェンソン・アソシエイツのリチャード・ミラーは、そのように語っています。

しかし、この奇抜なデザインは、完成当初から周囲の景観との不調和を指摘され、激しい批判の対象となりました。一方で、2009年8月にはフランスのオンライン・ビジネス・ジャーナル『Le Journal du Net』によって、世界で最もオリジナリティのあるビルディング12選の1つに選ばれるなど、評価は分かれています。

ちなみに、オーストラリアのメルボルンにあるメルボルン・セントラル・ショッピング・センターも、AT&Tビルと類似したデザインを持っています。

テナント

竣工から2006年までは、AT&T（前身はベルサウス、サウス・セントラル・ベル）がテネシー本社を置き、ビル全体を占有していました。しかし、現在は総スペースのうち約500,000平方フィート（46,000平方メートル）のみを使用しています。AT&Tのリース期間は2020年1月までの23.5年間でした。また、2008年中頃までの約2年間は、日産自動車が北米本社を置いていましたが、その後テネシー州フランクリンに移転しました。

オフィスとしての利用以外にも、地元のテレビ局であるWTVFチャンネル5が、1995年から1996年にかけて西塔に設置された2台のライブ・リモコン・カメラを利用し、ニュース放送時にナッシュビルの景色を流していました。

所有者

AT&Tビルは、竣工後、ピツニーボウズの不動産部門が設立したLLPであるPrefco XIV L.P.に約1億米ドルで買い取られました。その後、2006年7月には、Prefcoがサーベラス・キャピタル・マネジメントの子会社であるEntreCap Financialに買収され、AT&Tビルはすぐに売りに出されました。そして、2007年中頃にMTL Leasingが同ビルを購入しましたが、購入額は明らかにされていません。

AT&Tビルは、そのユニークな外観と歴史を通じて、ナッシュビルの都市景観に欠かせない存在となっています。

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