AT-10 (航空機)

ビーチクラフト AT-10 ウィチタ：第二次世界大戦の高等練習機

ビーチクラフト AT-10 ウィチタは、第二次世界大戦中、アメリカ陸軍航空隊においてパイロット養成に用いられた双発の高等練習機です。ビーチクラフト社とグローブ・エアクラフト社によって製造され、その堅牢性と信頼性から多くのパイロットを育成しました。

開発の背景と設計

1940年代初頭、アメリカ陸軍航空隊は多発機パイロットの養成を急務としていました。その需要に応えるべく、ビーチクラフト社は新型練習機の開発に着手しました。当時、アルミなどの戦略物資の不足が深刻な問題となっていたため、設計においては合板を主材料とするという、革新的なアプローチが採られました。

開発初期の試作機であるモデル25は、陸軍による評価試験中に1941年5月に墜落事故を起こしてしまいます。しかし、この事故を教訓に改良が加えられたモデル26は、同年7月に初飛行に成功。その後、性能試験を経て1942年2月、AT-10として正式採用されました。愛称である「ウィチタ」は、ビーチクラフト社の工場があったカンザス州ウィチタ市に由来しています。

生産と運用

AT-10 ウィチタは、1942年末までに748機がビーチクラフト社で生産されました。その後も生産は続けられ、1943年にはビーチクラフト社が1771機、グローブ・エアクラフト社が1944年までに600機を製造し、合計で2,000機以上が生産されました。

これらの機体は、爆撃機や輸送機パイロットの訓練に広く用いられ、多くのパイロットを育成する上で大きな役割を果たしました。その堅牢な機体構造と扱いやすい操縦性から、訓練機として高い評価を得ていたのです。

機体諸元と特徴

AT-10 ウィチタは、乗員2名用の双発機として設計されています。合板製の機体は軽量でありながら堅牢で、戦略物資の節約にも貢献しました。主な諸元は以下の通りです。

乗員: 2名
全長: 10.46 m
全巾: 13.41 m
全高: 3.15 m
空虚重量: 2,155 kg
最大離陸重量: 2,781 kg
エンジン: ライカミングR-680-9 × 2
出力: 295 hp (220 kW) × 2
最大速度: 319 km/h
巡航高度: 5,150 m
* 航続距離: 1,240 km

これらの性能は、当時の高等練習機としては十分なものであり、多くのパイロットが安全に訓練を行うことができました。

まとめ

ビーチクラフト AT-10 ウィチタは、第二次世界大戦におけるアメリカ陸軍航空隊のパイロット養成に大きく貢献した重要な機体です。戦略物資の制約という困難な状況下で開発されたにも関わらず、その堅牢性と信頼性で多くのパイロットを育成しました。AT-10 ウィチタは、アメリカ空軍の歴史において重要な位置を占める機体と言えるでしょう。

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