ATCコード D

ATCコードについて

ATCコード（Anatomical Therapeutic Chemical Classification System）は、世界保健機関（WHO）が開発・管理している、薬剤や関連する医療製品を体系的に分類するための国際的なコード体系です。このシステムは、アルファベットと数字を組み合わせたコードを用いて、各薬剤をその作用する解剖学的部位、治療上の用途、そして化学構造に基づいて分類します。

この分類法は、医薬品の国際的な比較、研究、統計、規制などに広く活用されています。個々の薬剤は、この体系の中で特定のコードに割り当てられ、世界中で共通の基準で識別することが可能になります。

皮膚科領域の分類（ATCコード D）

ATCコード体系は、まず主要な解剖学的区分に基づいて大分類されています。例えば、アルファベットの「A」は消化器・代謝系、「C」は循環器系といった具合です。その中でも「D」は、皮膚科領域（Dermatologicals）で使用される薬剤や製品全般を網羅する分類群として定められています。

この「D」のカテゴリーの下には、さらに細分化されたコードが設けられており、例えば抗真菌薬、抗生物質、ステロイド製剤、皮膚軟化薬など、様々な種類の皮膚治療薬が具体的な作用や化学構造に基づいて分類されています。

獣医学分野での応用（ATCvetコード）

ATCコード体系は、ヒト医療に加えて獣医学の領域にも応用されています。獣医学で使用される薬剤や製品の分類は、ATCvetコード（ATCvet Classification System）と呼ばれており、基本的にはヒト用のATCコード体系を基盤としていますが、明確な区別を図るためにコードの先頭にアルファベットの「Q」が付記されます。

例えば、ヒト用のATCコードが「D」で始まる皮膚科用薬剤の場合、獣医学で使用される同等または類似の薬剤のATCvetコードは「QD」から始まる形となります。

また、ATCvetコード体系の中には、ヒト用のATCコードには直接対応する分類が存在しない、獣医学領域独自の薬剤や分類群も設けられています。これらの固有分類についても、コードの先頭には「Q」が付記され、体系的な分類が実現されています。

国内レベルでの拡張可能性

世界保健機関（WHO）が定める公式のATCコード体系は、国際的な標準として機能しますが、すべての国や地域で用いられる薬剤や医療製品、あるいは国内固有の特定の医療事情を完全に網羅できるとは限りません。このような状況に対応するため、各国・地域レベルで、公式体系で網羅しきれない薬剤などについて、WHOが将来の使用のために予約している未使用のコード空間を活用し、独自の分類コードを追加して体系を拡張することが認められています。

これにより、国際的な標準を保ちつつ、各国内でのより詳細かつ網羅的な医薬品分類・管理が可能となっています。これらの国内独自の拡張コードは、国際的なコード体系と区別される形で運用されることが一般的です。

ATCコード、特に皮膚領域を示す「D」の分類は、医薬品の国際的な標準化、研究、そして管理において重要な役割を果たしており、その体系は獣医学分野や各国の事情に応じて柔軟な対応ができるよう設計されています。

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