After The Apples

After The Apples (アフター・ジ・アップルズ)

『After The Apples』は、日本のミュージシャン、吉井和哉が2011年11月16日にEMIミュージック・ジャパンよりリリースしたミニアルバム作品です。

作品概要

本作は、ソロ活動はもとより、自身が在籍したバンド時代を含めた吉井和哉の音楽キャリアにおいて、初めてリリースされたミニアルバムとして位置づけられます。

当初の制作プランでは、先行して発表されたフルアルバム『The Apples』のアウトテイクや未発表曲を中心に構成される予定でした。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災と、その後に開催されたツアー「Flowers & Powerlight Tour 2011」を経験する中で、吉井自身の心境やクリエイティブな状況に変化が生じます。

結果として、初期の構想から大きく方向転換され、収録曲の大部分が新たに書き下ろされ、レコーディングされた楽曲で構成されることになりました。アルバムの候補曲は13曲ほど存在し、中にはシングルとして発表されてもおかしくないような楽曲も含まれていましたが、本作では意図的にそうした性質の曲を外し、ミニアルバムとしてのコンセプトを重視した選曲が行われています。

サウンド面においても、前作『The Apples』で打ち込みを多用しつつもバンドサウンドに近い質感を追求していたアプローチから変化が見られます。本作ではその種のこだわりを排し、エレクトロニカやヒップホップといったジャンルに特徴的なリズムパターンやサウンドエフェクトを積極的に導入。より多様で実験的な音楽性への挑戦が試みられています。

レコーディングと演奏

レコーディングは、吉井和哉自身のプライベートスタジオである「APPLE STUDIO」にて行われました。特筆すべき点として、本作では外部のゲストミュージシャンを一切起用せず、全ての楽器演奏およびボーカルを吉井自身が一人で担当しています。これは、当時の吉井の心境や音楽的方向性が強く反映された結果と言えるでしょう。

アートワーク

アルバムのアートワークは、前作『The Apples』に引き続き、寺田亨氏が担当しました。寺田氏は本作の制作が正式に決定する以前から、「After The Apples」というテーマに基づいたアートワークを個人的に継続して制作していたとされており、その蓄積が本作のビジュアルイメージに繋がったとされています。

収録曲

本作に収録されている主な楽曲は以下の通りです。

無音dB
Next Innovation
母いすゞ
ダビデ
バスツアー
Born

楽曲解説（一部）

特に言及されている楽曲には以下のような特徴があります。

母いすゞ
吉井自身が「トラックはまさにヒップホップ」と語るほど、その影響が色濃い楽曲です。また、本作においては「Born」と並んで非常に重要な位置を占める曲であるとも述べています。この楽曲にはミュージックビデオも制作されました。

ダビデ
著名な彫刻作品であるダビデ像をモチーフとしています。楽曲の原型自体はアルバム『The Apples』を制作していた時期には既に存在しており、『The Apples』に収録されている楽曲「おじぎ草」と対になるような作品として位置づけられています。後の作品『Hummingbird in Forest of Space』の一曲目「Introduction」において、この曲の歌詞の一部が微かに聴き取れる形で引用されています。

Born
本作に収録されている楽曲の中で、唯一アルバム『The Apples』制作時のアウトテイク（未発表曲）から選ばれた楽曲です。今作に収録することが、他のどの曲よりも早く決定された、アルバムの核となる一曲でもあります。

初回限定盤特典

初回限定盤には、2011年に行われたツアー「Flowers & Powerlight Tour 2011」からのライブ音源を収録した特典ディスクが付属しました。このライブ音源には、吉井和哉（ボーカル）に加え、以下のサポートミュージシャンが参加しています。

日下部正則（ギター）
三浦淳悟（ベース）
吉田佳史（ドラム）
* 鶴谷崇（キーボード）

本作は、吉井和哉のキャリアにおける新たな試みと、当時の社会情勢や自身の内面の変化が反映された、重要な位置を占める作品と言えるでしょう。

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