At Home アットホーム

『at Home アットホーム』は、人気作家である本多孝好が2010年に発表した同名小説を基に、2015年に公開された日本映画です。この作品は、一見すると普通の家庭に見えながらも、その実態は血縁のない五人の男女が集まって形成された、秘密を抱える特別な家族の物語を描いています。

物語の背景

物語の中心となる森山家は、父・和彦、母・皐月、長男・淳、長女・明日香、次男・隆史の五人家族です。しかし、彼らには血の繋がりがありません。父親の和彦は元空き巣、母親の皐月は結婚詐欺師、長男の淳は優れた偽造技術を持つ職人見習いという、社会の裏側で生きる人々です。そして、子供たちもそれぞれに辛い過去を抱えていました。和彦は貧困から窃盗罪で服役し、家族を失った過去。皐月は元夫からの激しい家庭内暴力（DV）から逃れた過去。淳は裕福ながら厳格な家庭での精神的虐待。明日香は実父からの性的虐待。隆史は児童虐待の被害者。それぞれが深い心の傷を抱えながらも、偶然、あるいは必然的に出会い、「家族」として共に生きる道を選んだのです。彼らは互いの過去を受け入れ、助け合いながら、血縁にはない強い絆で結ばれていました。

ストーリー展開

物語は、この偽装家族に突如として訪れる危機から大きく動き出します。母親である皐月が、結婚詐欺を仕掛けようとした相手によって誘拐されてしまうのです。この事件をきっかけに、平穏に見えた彼らの日常は崩壊の危機に直面します。家族を守るため、そして皐月を救い出すため、残された和彦、淳、明日香、隆史は、それぞれの特技や知恵、そして培ってきた絆を武器に、困難な状況に立ち向かいます。彼らは警察に頼ることなく、自分たちのやり方で皐月の行方を追い、家族の絆を守るために奮闘するのです。

登場人物

森山 和彦（竹野内豊）：空き巣の経験を持つ、寡黙ながら家族への深い愛情を秘めた父親。
森山 皐月（松雪泰子）：結婚詐欺師としての顔と、子供たちを慈しむ母の顔を持つ。
森山 淳（坂口健太郎）：複雑な家庭環境から逃れ、偽造技術を磨く青年。
森山 明日香（黒島結菜）：過去のトラウマを抱えながらも、家族との絆を求める少女。
* 森山 隆史（池田優斗）：幼いながらに虐待の過去を持つ少年。

彼らを取り巻く人物として、和彦が刑務所で知り合った偽造師のゲンジ（國村隼）や、皐月の詐欺の標的となるミツル（村本大輔）などが登場し、物語に深みを与えています。

作品のテーマと評価

本作は、犯罪という社会の裏側を背景に置きながらも、「家族とは何か」「血縁とは異なる絆の形」「過去の傷を乗り越え、共に生きることの希望」といった普遍的なテーマを深く掘り下げています。それぞれの登場人物が抱える孤独や絶望、そしてそれらを乗り越えようとする姿が丁寧に描かれており、観る者の心を打ちます。

映画は、監督を蝶野博が務め、脚本を安倍照雄が担当しました。製作には吉本興業、研音などが参加しています。出演者の熱演と、独特の世界観を表現するスタッフワークにより、原作の持つ魅力を映像化しました。

国際的にも注目され、第39回モントリオール世界映画祭のフォーカス・オン・ワールド・シネマ部門に正式招待されるなど、高い評価を受けました。また、国内でも第1回京都国際映画祭のオープニング上映作品に選ばれています。2016年1月にはBlu-ray/DVDも発売され、多くの視聴者に届けられています。

『at Home アットホーム』は、重い過去を持つ人々が、互いを支え合いながら真の家族を築こうとする姿を描いた、感動的で示唆に富む作品です。血縁だけが家族ではない、というメッセージを力強く伝えています。

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