AX

AX（エーエックス）とは

AX（Architecture eXtended）は、日本のパソコン規格の一つとして、1986年に登場しました。これはPC/AT互換機にハードウェア的に日本語機能を付加することを目的としています。この規格は、当時のパソコン市場で圧倒的なシェアを誇っていたNECのPC-9800シリーズに対抗する形で、アスキーとマイクロソフトの共同提案によって設立されました。

AX規格の背景と発表

1986年、日本電気（NEC）のPC-9800シリーズは日本のパソコン市場で圧倒的な地位を築いていましたが、PC/AT互換機の存在も無視できない状況でした。特にPC/AT互換機は安定した動作を提供しており、多くのユーザーに受け入れられていました。そこで登場したAX規格は、表示解像度の向上と日本語対応を目指しました。具体的には、EGA（640×350ドット）を基にしたJEGAモード（640×480ドット）が採用され、専用チップによって日本語表示機能が追加されました。

AX協議会の設立と普及の課題

1987年10月、NECと富士通、松下電器を除く多くの電気機器メーカー（ソニー、日立製作所、シャープ、東芝など）がAX協議会を設立しました。1988年2月、三洋電機が発売したMBC-17Jを皮切りに、AX規格に基づくパソコンが市場に登場しました。しかし、製造コストの上昇により、これらのパソコンはその後のPC/AT互換機やNECのPC-9800シリーズに比べて価格が高くなり、広く普及することはありませんでした。

競合との関係

さらに、日本IBMや東芝はそれぞれ独自の日本語化手段を採用しており、AX規格に基づくコンピュータとの日本語ソフトウェアの互換性が問題視されたことも、普及を難しくしました。そのため、AX規格のシェアは限られた範囲にとどまり、パソコン店頭で見かける機会は少なかったのです。特に、次第にVGAが普及し、1990年末には特別なハードウェアが不要なDOS/Vが登場したことで、AXの存在意義が問われることとなりました。

AXの進化と統合

AX規格の陣営は1991年にPCオープン・アーキテクチャー推進協議会（OADG）の仕様に合流し、DOS/VのVGAコンセプトを採用することになりました。その過程でAX-VGAと呼ばれる新たな仕様が開発され、1992年には日本語ソフトをVGAモードで実行可能な製品も登場しましたが、残念ながら広く普及することはありませんでした。

その後、1992年にマイクロソフトがMS-DOS 5.0a/Vという互換性を試みる製品を発表しましたが、ユーザーからの反発により発売は中止されました。結局、1993年にWindows 3.1が発売されると、AXは市場から姿を消すことになりました。

AX協議会の後続と現在

AX協議会は1992年にオープンインタフェース株式会社に移行し、システムインテグレータとして活動を続けましたが、この会社も2011年に破産してしまいました。AXの歴史は、技術革新や市場の変化により消えていった一つの試みとして、今でも多くの人々の記憶に残っています。

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