BARB (イギリスの団体)

BARB：イギリスのテレビ視聴動向を測る機関

BARB（正式名：The Broadcasters' Audience Research Board）は、イギリスにおけるテレビ番組の視聴者数を調査・分析し、その結果を公表する機関です。日本のビデオリサーチと同様の役割を担っており、イギリスのテレビ業界において非常に重要な存在となっています。

BARBは、かつてはITV（イギリス最大の民間テレビ局）が視聴者数を集計していたJICTARと、BBC（公共放送局）の社内調査部門の機能を統合する形で、1981年に設立されました。現在では、BBC、ITV、チャンネル4、チャンネル5、Sky UKといった主要テレビ局と、広告業界団体IPAが共同で出資し、運営されています。

調査対象と集計方法

BARBの調査対象は、イギリス国内で視聴可能な全てのテレビ番組です。イギリスのテレビ局だけでなく、海外のテレビ局の番組も含まれます。ただし、Netflixなどのオンデマンド配信サービスの視聴者数は、リアルタイムでの集計は行っておらず、調査レポートで言及するにとどまっています。これはBARBが現在取り組むべき課題の一つでもあります。

集計データは、以下の3種類が公表されています。

同日視聴者数 (VOSDAL): 放送当日にリアルタイムで視聴した人数と、録画して同日に視聴した人数の合計。
週間視聴者数: 放送日から7日以内（放送当日の視聴者数を含む）に視聴した人数の合計。
* 月間視聴者数: 放送日から28日以内（放送当日の視聴者数を含む）に視聴した人数の合計。

これらのデータは、番組別、テレビ局別、ジャンル別に集計され、BARBの公式ウェブサイトで公開されています。ウェブサイトでは、週間・月間視聴者数ランキングなども確認できます。

集計は、イギリス全土の5,100世帯（約12,000人）を対象とした調査パネルを用いて行われます。このパネル世帯の視聴データを収集・分析し、イギリス全体の人口に拡大推計することで、各番組の視聴者数を算出しています。この5,100世帯というサンプルサイズは、イギリス総人口約6,600万人に対して、非常に少ないサンプル数であると言えますが、統計学的手法を用いることで、信頼性の高い推計値を得られるよう工夫が凝らされています。

BARBは、調査業務の一部を外部企業に委託しています。RSMB社は調査アンケートの設計と品質管理、Ipsos MORI社は視聴世帯の動向調査、Kantar Media社は集計機器の設置とデータ収集を担当しています。Kantar Media社が設置する集計機器には専用のリモコンが付属し、世帯の4歳以上の家族全員が個別のボタンを割り当てられており、誰がどの番組を視聴したかを正確に把握できるようになっています。データは各世帯からKantar Media社に15秒間隔で送信され、リアルタイムの視聴者数集計は1分単位で行われています。そして、深夜2時に前日の全番組データを集計し、拡大推計して午前9時半に同日視聴者数を公表する、という効率的なシステムが構築されています。

データの活用と課題

BARBの公表データは、テレビ局や広告代理店によって、番組編成や広告戦略の策定に活用されています。特に、広告料は番組の視聴者数に応じて支払われるため、BARBのデータはテレビ局の収益に大きな影響を与えます。

しかし、近年はインターネットの普及に伴い、オンデマンド配信サービスの利用が拡大しており、従来型のテレビ視聴者の減少が懸念されています。2015年のフィナンシャルタイムズの記事にもあるように、オンライン視聴を含めた包括的な視聴者数データの必要性が指摘されており、BARBもBBC iPlayerなどのオンデマンド配信サービスの視聴者数把握に課題を抱えていることを認めています。この課題への対応が、BARBの今後の重要な取り組みとなるでしょう。iPadなどでの視聴の把握についても、解決策はあるものの、完全な実用化には至っていないのが現状です。

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