BRAIN VALLEY

『BRAIN VALLEY』（ブレイン・ヴァレー）は、瀬名秀明が1997年に発表したSF小説であり、第19回日本SF大賞を受賞しました。この作品は、人間の意識、神の起源といった根源的なテーマを扱い、脳科学、霊長類学、人工知能といった科学的な知見を基盤としています。

物語は、主人公である脳科学者、孝岡護弘が、ある神経伝達物質の受容体を特定したことから始まります。彼は「ブレインテック」という研究所に主任部長として迎えられます。この研究所は、シリコンバレーになぞらえて「ブレインヴァレー」と呼ばれ、人里離れた船笠村に位置しています。研究所長の北川嘉朗は、捉えどころのない人物で、孝岡は彼が口にする「向こう側」という言葉に違和感を覚えます。

物語は、体外離脱や臨死体験、百匹目の猿現象といった、科学では解明されていない現象にも焦点を当て、読者を深い思索へと誘います。専門用語が頻出するものの、作者である瀬名秀明は、エンターテイメントとして科学の面白さを伝えることを意図しており、そのために解説的な書籍も出版しています。

主要な登場人物は以下の通りです。

孝岡護弘（たかおか　もりひろ）: 主人公の脳科学者、分子生物学者。
メアリーアン・ピータースン: 白人女性の医師。
北川嘉朗（きたかわ　よしろう）: ブレインテック研究所長、医師。老齢。
ウォレン・パーカー: 黒人男性の人工知能研究者。
ジェイコブ・ピータースン: メアリーの息子。
秦野真奈美（はたの　まなみ）: 研究生で霊長類学者を目指す人物。チンパンジー・ハナの世話役。
富樫玲子（とがし　れいこ）: 北川の秘書。
加賀彗樹（かが　さとき）:
広沢亮（ひろさわ　とおる）:
孝岡裕一（たかおか　ゆういち）: 護弘の息子で同性愛者。
鏡子: 船笠村の住民。

物語の冒頭は、あるテレビ局のロケーション撮影事故から始まり、これが後の伏線となっています。孝岡がブレインテックに招かれた背景には、「オメガ・プロジェクト」という謎の計画が存在します。物語は、このプロジェクトの真相を追いながら、人間の意識や存在意義について深く掘り下げていきます。

『BRAIN VALLEY』は、その複雑なプロットと、科学的な要素を巧みに織り交ぜたストーリー展開によって、読者に強烈な印象を与え、SF文学の新たな地平を切り開いた作品と言えるでしょう。

書誌情報：

『BRAIN VALLEY』上、下（上製本）角川書店
『BRAIN VALLEY』上、下（文庫本）角川書店〈角川文庫〉
『BRAIN VALLEY』上、下（文庫本）新潮社〈新潮文庫〉

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