BRM・P126

BRM・P126：英国が生んだ孤高のF1マシン

1968年と1969年、F1世界選手権のグリッドに現れたBRM・P126は、ブリティッシュ・レーシング・モータース（BRM）の挑戦を象徴する1台でした。ロータスやイーグルで知られる名デザイナー、レン・テリーの手によるこのマシンは、その独創的な設計と、幾多の苦難を乗り越えた開発物語で知られています。

誕生の経緯：V12エンジンと独立デザイナー

BRMは1966年から1967年にかけて、H16エンジンの開発に尽力しましたが、成果は乏しいものでした。そこで、マクラーレンにも供給していた信頼性の高いBRM製3.0リッターV12エンジン、P142をベースに新たなF1マシンを開発することになりました。このプロジェクトに携わったのは、BRMの所属デザイナーではなく、独立系デザイナーのレン・テリーでした。テリーは、BRMと契約する形で、自らのワークショップであるトランスアトランティック・オートモーティヴ・コンサルタンツでP126を設計・製造しました。このため、P126はBRM社が製造しなかった初のBRM製レーシングカーという異例の形で誕生することになったのです。

テリーは、このV12エンジンを収めるべく、新たにスペースフレームを設計しました。エンジン自体は、1967年のスポーツカー、ミラージュM2用に開発されたもので、1気筒あたり2バルブという当時としては珍しい設計（多くのエンジンは4バルブ）ながら、360馬力を発生する強力なものでした。車体には軽量なモノコック構造を採用し、ギアボックスはヒューランド製の5速マニュアルトランスミッション、車重はわずか540kgに抑えられました。P126は合計3台が製造され、そのうち1台はレグ・パーネル・レーシングに供給されました。

オーウェン・レーシング・オーガニゼーション：モナコGPでの躍進

オーウェン・レーシング・オーガニゼーションは、若き才能ペドロ・ロドリゲスを擁してP126を走らせました。しかし、開幕戦の南アフリカGPでは燃料システムトラブルでリタイア。その後、チームはリチャード・アトウッドを起用し、P126での戦いを続けました。

アトウッドは、モナコGPで予選6位を獲得すると、決勝レースでは見事2位入賞を果たし、P126のポテンシャルの高さを世界に示しました。しかし、他のレースでは機械トラブルや予選順位の低迷により、目立った成績を残すことができませんでした。ベルギーGPではオイルパイプ破損、イギリスGPではラジエーター破損、ドイツGPでは予選20位と苦戦が続きました。イタリアGPでは、ボビー・アンサーが起用される予定でしたが、別のレースへの出場を優先するために参戦をキャンセルするというハプニングもありました。シーズン終盤には、オーウェン・レーシング・オーガニゼーションはP133の開発に重点を移し、P126は役目を終えました。

レグ・パーネル・レーシング：粘り強い戦い

レグ・パーネル・レーシングは、ピアス・カレッジをドライバーに起用し、P126で1968年シーズンを戦いました。幾多の機械トラブルに見舞われながらも、フランスGPでシーズン初完走を果たし6位入賞。その後も、ドイツGPで8位、イタリアGPでは4位入賞と健闘を見せました。しかし、多くのレースでリタイアを余儀なくされ、マシンの信頼性の低さが課題として残りました。1969年シーズンは、ペドロ・ロドリゲスが3戦のみ参戦しましたが、いずれもリタイアに終わっています。

まとめ：潜在能力と課題

BRM・P126は、革新的な設計と強力なエンジンを備えた、潜在能力の高いマシンでした。モナコGPでの2位入賞は、そのポテンシャルの高さを証明しています。しかし、機械的な信頼性の低さが大きな課題となり、その真価を発揮しきれませんでした。それでも、F1の歴史に名を刻んだ1台であることは間違いありません。その存在は、技術革新と挑戦の歴史を物語る、貴重な遺産と言えるでしょう。

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