BUZZ MAFF

BUZZ MAFF（ばずまふ）

農林水産省の若手有志職員を中心とした情報発信プロジェクト、およびその主要な活動媒体であるYouTubeチャンネルの名称です。自らを「霞ヶ関初の官僚系YouTuber」と称し、日本の食や農山漁村の魅力をSNSを通じて積極的に発信するこの取り組みは、農林水産省大臣官房広報評価課広報室が所管しています。その名称は、世間で話題になることを意味する「バズる」という言葉と、農林水産省の英語名（Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries）の頭文字から取られた略称「MAFF」を組み合わせて名付けられました。

概要

「BUZZ MAFF」チャンネルでは、ほぼ毎日、農林水産省の職員による多岐にわたるジャンルの動画が投稿されています。動画に出演するのは、主に20代から30代の若手職員ですが、全国各地から選ばれた職員もプロジェクトに参加しています。特筆すべきは、これらの動画制作を外部の広告代理店などに委託せず、企画、撮影、編集といった一連の作業を全て職員自身が手掛けている点です。これは公務として位置づけられており、必要に応じて出張費や残業代が支給される場合もあるとのことです。チャンネル開設当初の動画に用いられていたオリジナルのジングルは、当時の事務次官と官房長という幹部職員が自ら演奏したものでしたが、後に人気ロックバンドである打首獄門同好会から提供された音源に変更されています。

彼らがYouTuberとして活動する背景には、特に若い世代に対して情報を効果的に届けるツールとして、YouTubeが最適であるという考えがあります。動画に出演するのは、食に関する知識が豊富だったり、農業や農政に対して強い思いを持つ職員たちです。さらに、動画制作の過程で職員が現場を訪れて撮影を行うことは、彼ら自身が農業や漁業、あるいは地方の抱える課題や現状を肌で感じ、理解を深める貴重な機会となっています。

動画制作における基本的なルールは以下の二つのみです。

• - 国産の農林水産物や農山漁村の魅力を発信すること
• - 公務員として不適切な表現や内容を含まないこと

このシンプルなルールのもと、制作チームは極めて自由な発想で動画作りを進めています。例えば、

• - パンダの着ぐるみを着た女性職員が、アンテナショップで購入した国産食材を公園などで食べる様子を紹介する「大人のピクニック」
• - 日本茶好きの職員が、省内に設けた組立茶室で来訪者にお茶を振る舞い、日本茶や茶道の魅力を発信する「日本茶チャンネル」
• - 大臣記者会見の動画に、宮崎弁で面白くアフレコをつけたもの
• - 地理的表示（GI）保護制度のような難解な制度をラップのリズムに乗せて分かりやすく解説するもの

など、ユニークで型破りなコンテンツも数多く生まれています。このプロジェクトは大臣直轄の事業と位置づけられており、制作された動画の著作権や権利関係のチェックは広報室が行いますが、それ以外の中間管理職による決裁プロセスは事実上省略され、迅速な発信を可能にしています。

なお、農林水産省はYouTubeだけでなく、TwitterやFacebookといった他のSNSもそれぞれの特性に合わせて情報発信に活用しています。「BUZZ MAFF」は農林水産省のYouTubeチャンネルの一つですが、別途、主に大臣記者会見などを配信する公式チャンネル「maffchannel」も存在します。「BUZZ MAFF」は位置づけとしてはこの「maffchannel」のサブチャンネルという扱いになります。

沿革

「BUZZ MAFF」プロジェクトは、2019年10月頃、当時農林水産大臣に就任した江藤拓氏の発案により始まりました。江藤大臣が「これまでの堅い広報では誰も見てくれない」「ネットを活用して日本の魅力、特に食や農山漁村の情報を若い世代や世界に向けて工夫して発信したい」と職員に投げかけたことがきっかけとなりました。この大臣の呼びかけに対し、省内で積極的に情報発信に取り組みたいと考える職員やグループを募集したところ、24チームから応募があり、最終的に地方農政局の職員を含む14チーム、総勢69名がプロジェクトメンバーとして選ばれました。江藤大臣は初代の「名誉編集長」を務め、以降の農林水産大臣もこの役職に就任し、動画に出演してプロジェクトを盛り上げることもあります。

特に話題となった事例として、2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃の取り組みが挙げられます。卒業式など各種イベントの規模縮小により花の需要が大幅に落ち込んだ状況を受け、農林水産省は花の消費拡大を促す「花いっぱいプロジェクト」を開始しました。このプロジェクトをPRするため、九州農政局のチーム「タガヤセキュウシュウ」（メンバーは白石優生氏、野田広宣氏）が同年3月12日に投稿した動画が、そのシュールな演出で一部から大きな反響を呼びました。動画の内容は、登場する職員二人の周囲に、画面に表示されるテロップが消えるたびに少しずつ花が増えていくというユニークなものでした。この動画の担当者は、後の取材に対し、「何としてでも花の消費拡大に貢献したいという思いから、視聴者に強く印象付けるような動画を目指しました」と語っています。

このように、「BUZZ MAFF」は、霞ヶ関の中央官庁としては異例ともいえる、職員主導の自由でユニークな情報発信を通じて、日本の農林水産業や地域に対する国民の関心を高め、親しみやすさを向上させるための重要な取り組みとなっています。

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