Be-30 (航空機)

ベリエフ Be-30は、ソビエト連邦のベリエフ設計局によって開発された双発のターボプロップ航空機です。この機体は、国内の地方都市を結ぶアエロフロートのローカル路線での使用を主な目的として設計されました。特に、インフラが十分に整備されていない地域の空港や、短い芝生のような非舗装滑走路からの離着陸を可能にする優れた短距離離着陸性能（STOL性能）を持つことが重視されました。

開発と設計の背景
開発は1960年代半ばに始まりました。初期の設計案では、左右のエンジンが相互に機械的に連結されており、片方のエンジンが故障した場合でも残ったエンジンで両方のプロペラを駆動できるというユニークな機構が検討されていましたが、これは複雑すぎたためか、最終的な生産型には採用されませんでした。

最初のプロトタイプ機は、より旧式のシュベツォフ ASh-21ピストンエンジンを搭載して、1967年3月3日に初飛行を行いました。その後、計画通り、より近代的なグルシェンコフ TVD-10ターボプロップエンジンへの換装が進められ、この新しいエンジンを搭載した量産型の初号機が1968年10月に空へ飛び立ちました。

多用途性と競合機
Be-30は単なる旅客機としてだけでなく、多用途に対応できる設計となっていました。標準的な構成では2名の乗員で14名から16名の乗客を運ぶことができますが、座席を密に配置する高密度仕様では最大30名から32名までの搭乗が可能でした。また、座席を取り外して貨物機として運用したり、空中からの測量任務に使用したりすることも計画されました。さらに、医療搬送のための航空救急車としても設計されており、ストレッチャーに乗せた患者や付き添いの医療関係者を収容できるスペースが確保されていました。

開発当時は、同様の市場を狙う競合機がいくつか存在しました。ソ連国内ではアントノフ An-28が、そして東欧からはチェコスロバキア製のLET L-410ターボレットなどが挙げられ、これらと比較検討されることになりました。

生産と運用の状況
残念ながら、Be-30シリーズは大量生産には至りませんでした。プログラムが継続していた1960年代後半までに製造されたのは、Be-30が3機、そして改良型のBe-32も3機のみと記録されています。商業的には大きな成功を収めることができず、1990年代初頭には、少数の機体がその性能を示すためのデモンストレーターとして改装され、パリ航空ショーやドバイ航空ショーといった国際的な場で展示されました。

改良型のBe-32は1993年に初登場し、エンジンやプロペラに変更が加えられています。さらに、西洋製のエンジンを搭載したBe-32Kという「西洋化」バージョンも計画されるなど、設計の改良は続けられました。しかし、展示を通じていくつかの発注があったにもかかわらず、実際にそれらの機体が製造され、顧客に引き渡される前に、プログラムは事実上停止してしまいました。現在残っている機体の一部は、かつて存在したモスクワ航空の塗装をまとっている姿が確認されています。

製造数の少なさから、運用された期間や組織も限られています。ソ連時代のアエロフロート、そして短期間ロシアのモスクワ航空やコンゴ民主共和国のエアアフリカでの運用が予定されていたか、ごく短期間行われた可能性が考えられます。

主要諸元 (Be-30量産型)
乗員: 2名
乗客数: 14-16名（標準）、最大30-32名（高密度）
最大ペイロード: 1,500 kg
全長: 15.7メートル
翼幅: 17メートル
全高: 5.52メートル
翼面積: 32平方メートル
空虚重量: 3,607 kg
最大離陸重量: 5,860 kg
燃料容量: 1,000 kg
エンジン: グルシェンコフ TVD-10 ターボプロップ × 2基
各基出力: 708 kW (949 hp)
プロペラ: 3枚羽根 定速プロペラ
最高速度: 480 km/h (高度3,000m)
巡航速度: 460 km/h (高度3,000m)
航続距離: 1,300 km

ベリエフ Be-30は、ソ連の広大な地域における航空交通のニーズに応えるべく開発された機体でしたが、様々な要因により限られた数しか生産されず、その歴史は短いものとなりました。しかし、その設計思想には、劣悪な飛行場環境での運用を可能にするソ連/ロシア機の特色がよく現れています。

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