Beamer

Beamerは、高機能な組版システムであるLaTeX上で、プレゼンテーション資料を作成するために開発されたクラスです。その名称は、ドイツ語でビデオプロジェクターを意味する言葉に由来しています。

LaTeXを利用したプレゼンテーション作成の試みはBeamerが登場する以前にも存在していましたが、Beamerも先行するクラスと同様に、プレゼンテーションの各スライドを「フレーム」と呼称し、これを定義するための独自の構文を提供しています。このクラスの大きな特徴の一つは、スライド上の特定の要素（テキストや画像など）を最初は隠しておき、後から段階的に表示していくという効果（オーバーレイ機能）を実現できる点です。

この段階表示は、PDFファイルの出力メカニズムを巧みに利用して実現されます。具体的には、同一のレイアウトを保ったまま、表示させたい要素を順次追加した複数のページをPDFとして生成します。そして、プレゼンテーション時にはこれらのページを順番に表示することで、あたかも一つのスライド上で要素が追加されていくように見せるのです。

Beamerは単に画面表示用のプレゼンテーションだけでなく、多様な形式での出力が可能です。例えば、発表を聞く人向けの「配布資料」を作成する機能があります。この機能を使うと、プレゼンテーションの際に用いる動的な表示（段階表示など）を排し、各スライドの最終的な表示状態だけを固定して印刷に適した形式で出力できます。また、標準的なA4サイズで、タイトル、章、節といった構成要素が適切に配置された「論文」形式の文書を作成することも可能です。

この論文形式は、講義のノートとして利用するのに適しており、また、同一のLaTeXソースファイルからプレゼンテーション用のスライドと、内容の詳細を記述した論文形式の文書の両方を生成できるため、非常に効率的です。

Beamerには、あらかじめデザインされた様々なスタイルや、豊富な色使いのテーマが組み込まれており、ユーザーはこれらを利用して視覚的に魅力的なプレゼンテーションを比較的容易に作成することができます。

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