Canna

日本語入力システム「Canna」：その歴史と技術、そして未来

「Canna（かんな）」は、NECによって開発された、UNIX環境、そして後にWindows環境にも移植された、クライアント・サーバ型の日本語入力システムです。その歴史は、1989年にNECがUNIXワークステーションEWS4800のウィンドウシステムをX Window Systemに移行したことに端を発します。それまでパソコン用のシステムを流用していたかな漢字変換を、より高度なものへと進化させる必要性が生じ、1つのプロセスでかな漢字変換を同時に行えるシステムとしてCannaが開発されました。

初期バージョンであるCanna Ver.1.1は社内利用を目的としてリリースされましたが、その後Ver.1.2はXコンソーシアムに寄贈され、フリーソフトウェアとして公開されました。これは、NECがUNIX事業に参入したばかりで業界標準を目指していたという背景が大きく影響しています。システムの名前「Canna」は、かな漢字変換の「かな」を「仮」と読み、「かんな」としたことに由来し、アルファベット表記は適当に付けられたものです。

Ver.2.1では、JIS X 0212対応、ワイドキャラクタ対応、逐次自動変換機能追加など、機能が大幅に強化されました。その後はWindows版「かんな for Windows」が開発の中心となり、UNIX版はその後に追随する形となりました。1999年時点での語彙数は、製品版Windows版で約10万語、フリー版で約4万語でした。

NECによる開発・販売は終了しましたが、UNIX版はフリーソフトウェアとして公開され続け、現在も有志による保守・開発がSourceForge.jpを拠点に行われています。

Cannaは、変換サーバである『cannaserver』と、変換クライアント（例えば『kinput2』）間で『cannaプロトコル』を用いて通信することで漢字変換を実現しています。この方式によって、複数のクライアント間で漢字辞書を共有することが可能になります。その高い機能性と安定性から、Linuxにおいては標準的な日本語入力システムとして現在も利用されています。

Windows版についても、Windows XP以降の環境では、公式にはサポートされていませんが、インストーラーのプロパティで互換性をWindows NTに設定することで、インストールと使用が可能になる場合があります。これは、Windows NTと内部構造に互換性がある部分があったためです。

このように、Cannaは長年に渡り多くの人々に利用されてきた歴史を持ちます。フリーソフトウェアとして公開されたことで、NECの開発終了後も、有志の技術者達によって保守・開発が継続され、現在に至っています。その技術的な特徴や、フリーソフトウェアとしての公開、そしてコミュニティによるサポートという点において、日本のソフトウェアの歴史において重要な位置を占めるシステムと言えるでしょう。

技術的な側面では、クライアント・サーバ方式を採用することで、複数のアプリケーションからの同時利用や、辞書ファイルの共有化といったメリットを実現しています。また、プロトコルによる通信方式は、システムの拡張性や柔軟性にも貢献しています。 現代の高度な日本語入力システムと比較すると、インターフェースや機能面で差を感じる部分もあるかもしれませんが、その歴史と技術的な着眼点は、現在における日本語入力システムの進化にも大きく貢献していると言えるでしょう。

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