CD-63

マランツ CD-63：2つの異なる歴史を持つ同名機

オーディオの世界では、同一メーカーから同じ型番で全く異なる製品が発売されることは稀ですが、マランツのCD-63は、その珍しい例として知られています。この型番を持つ2つのCDプレーヤーは、それぞれ異なる時代背景と技術思想を反映しており、オーディオ愛好家の間で話題となっています。

1982年発売 CD-63：マランツ初のCDプレーヤー

1982年に登場した初代CD-63は、マランツが初めて手掛けたCDプレーヤーです。当時、フィリップスの傘下に入ったマランツは、フィリップスの最先端デジタル技術、光学技術、機構技術を惜しみなく投入しました。189,000円という高価格設定からもわかるように、当時の最高技術を結集したフラッグシップモデルでした。

特徴的なのは、独自のスイングアーム型CDM-0メカニズムです。このメカニズムは、CDを正確に読み取るために重要な役割を果たしました。また、D/A変換回路には、当時としては画期的な4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター、二次ノイズシェイパー、そして14bit型DACのTDA1540を左右独立に採用。14bitのDACでありながら、ノイズシェイパーとオーバーサンプリングによって16bit相当の精度を実現しました。

この初代CD-63で培われた技術は、後の普及モデルCD-34に受け継がれ、CDプレーヤーの普及に大きく貢献しました。トップローディング方式でシルバーカラーという外観も、このモデルを特徴づける要素です。

1993年発売 CD-63：普及価格帯モデル

1993年に登場した2代目CD-63は、普及価格帯をターゲットにしたモデルです。初代CD-63とは異なり、トレイローディング方式でブラックまたはゴールドカラーという外観を持ちます。定価は40,000円と、初代モデルに比べて大幅に価格が抑えられています。

メカニズムはリニアトラッキング型のCDM-12に変更され、デジタル部には18ビット8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターと1ビットDACが搭載されました。アナログ部には、マランツ独自の高速電圧増幅モジュールであるHDAMが採用され、高音質化に貢献しました。光デジタル出力端子は廃止され、同軸デジタル出力のみとなっています。

この2代目CD-63は、廉価版のCD-53やブラッシュアップモデルのCD-63SEなどのバリエーションモデルも存在し、後のCD-67、CD-67SE、CD6000OSEといったモデルのベースとなりました。

中古市場での注意点

同じ型番でありながら、全く異なる2つのCD-63が存在するため、中古市場で探す際には注意が必要です。外観、メカニズム、搭載された技術も大きく異なるため、製品写真などから詳細を確認することが大切です。1982年発売のCD-63はトップローディング方式のシルバーカラー、1993年発売のCD-63はトレイローディングタイプのブラックカラーまたはゴールドカラーが目印です。

このように、マランツのCD-63は、オーディオ史における2つの異なる時代を象徴するモデルとして、今もなお多くのファンに愛されています。

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