CDKN1B

CDKN1B（p27）

CDKN1Bは、正式名称をサイクリン依存性キナーゼ阻害タンパク質1B（Cyclin-dependent kinase inhibitor 1B）といい、ヒトにおいてCDKN1B遺伝子によってコードされるタンパク質です。一般的にはp27という名称でも広く知られています。このタンパク質は、細胞が増殖・分裂するサイクルである細胞周期において、進行を調整する重要なブレーキ役として機能します。

分類

CDKN1Bは、細胞周期の進行を負に制御するタンパク質のグループである、サイクリン依存性キナーゼ（CDK）阻害タンパク質（CKI）に分類されます。さらにCKIの中でも、Cip/Kipファミリー（CDKN1A/p21, CDKN1B/p27, CDKN1C/p57を含む）に属しています。このファミリーのタンパク質は、サイクリンとCDKの両方に結合し、サイクリン-CDK複合体の活性を阻害する能力を持っています。

機能と細胞周期制御

細胞周期は、G1期、S期、G2期、M期という段階を経て進行し、各段階への移行はサイクリン依存性キナーゼ（CDK）の活性によって制御されます。CDKは特定のサイクリンタンパク質と結合して複合体を形成することで活性化し、細胞周期の進行に必要な標的タンパク質をリン酸化します。

CDKN1Bの主要な機能は、このサイクリン-CDK複合体の活性を阻害することです。特に、細胞周期のG1期からS期への移行を制御する上で中心的な役割を果たします。G1期後期に細胞がS期へ進むためには、特定のCDK（例えばCDK2やCDK4/6）が活性化される必要があります。

CDKN1Bは、G1期で働くサイクリン-CDK複合体、具体的にはサイクリンE-CDK2複合体やサイクリンD-CDK4/6複合体に対して高い親和性を持って結合します。CDKN1Bがこれらの複合体に結合すると、CDKの活性部位を物理的に遮断したり、複合体の構造を変化させたりすることで、キナーゼ活性が著しく低下します。これにより、S期への移行に必要な標的タンパク質のリン酸化が抑制され、細胞周期がG1期で停止、あるいは進行が遅延します。

このように、CDKN1Bはサイクリン-CDK複合体の活性を直接的に阻害することで、細胞分裂のサイクルを一時的に停止させたり、進行を遅らせたりする「負の制御因子」として機能します。その強力な細胞周期阻害作用から、「細胞周期阻害タンパク質」という名称が与えられています。CDKN1Bの適切な機能は、正常な細胞増殖の維持や、がん化の抑制に不可欠であると考えられています。

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