CELT

CELT（Constrained Energy Lapped Transform）は、Xiph.Org Foundationによって2007年末から開発が開始された非可逆圧縮の音声コーデックです。Xiph.Orgの他のプロジェクトと同様に、ソフトウェア特許に抵触せず、修正BSDライセンスの下で提供される自由ソフトウェアとしてリリースされました。しかし、2011年8月に開発は終了し、その役割は後継のOpus (RFC 6716) に引き継がれることとなりました。

概要

Xiph.Orgは既に、主に音楽用途の汎用コーデックであるVorbisと、人声に特化した通話用コーデックであるSpeexという二つの非可逆圧縮音声コーデックを開発していました。CELTは、これらの二つのコーデック間のギャップを埋める目的で開発されました。具体的には、32kbpsから128kbps程度の低ビットレート域での使用を想定しており、VoIPアプリケーションでのリアルタイム通信や、ウェブ上でのポッドキャストなどでの利用が考えられていました。

CELTの最大の特徴は、その極めて低い遅延（レイテンシ）にあります。この低遅延性は、リアルタイムでの音声通信において特に重要であり、CELTが特定の用途で重宝された理由の一つです。2011年3月には、Hydrogenaudioというサイトで実施された64kbps帯域でのリスニングテストにおいて、CELTはHE-AACと同等かそれ以上の性能を示すという結果が出ています。これはCELTの低ビットレートにおける高い効率性と音質を示すものです。

IETFでの標準化と終焉

Xiph.Orgは当初、CELTをIETF（Internet Engineering Task Force）において標準化することを目指していました。しかし、その標準化に関する議論の中で、Skype社（当時）が開発した無償の音声コーデックであるSILKとCELTを組み合わせたコーデック「Opus」の草案が、2010年9月に両方の開発者によってIETFに提出されました。

この提案を受けて、2011年8月にCELTの開発は正式に終了することとなりました。その後、標準化作業も2012年9月に完了し、OpusがRFC 6716として登録されました。これにより、CELTの技術はOpusに統合され、その開発の歴史に幕を閉じることとなりました。CELTが果たした役割は、低遅延という重要な特性を持つOpusに継承され、今日でも様々な音声通信アプリケーションで活用されています。

関連項目

Opus (音声圧縮)

参照

The CELT ultra-low delay audio codec 公式サイト
Jean-Marc Valin's random rants on DSP, Speex, open-source
コーデックの聴き比べもできる。'>next generation audio: CELT update 20101223

もう一度検索