CSX8888号暴走事故

CSX8888号暴走事故について

CSX8888号暴走事故（英称：CSX 8888 incident）は、2001年5月15日にアメリカ合衆国オハイオ州で発生した重大な列車事故です。この事件では、CSXトランスポーテーションの貨物列車が運転士不在のまま暴走し、最終的には別の機関車によって止められる事態となりました。この事故は2010年の映画『アンストッパブル』のモデルにもなっており、多くの人々に衝撃を与えました。

事故の詳細

事故の発生経緯

2001年5月15日、オハイオ州トレド近郊のCSXの操車場スタンリーヤードで、経験豊富な機関士が貨物列車の入れ替え作業を進めていました。彼は機関車8888号を発車させた後、進行方向のポイントが誤っていることに気づき、空気ブレーキをかけましたが、止まり切れないと判断し、機関車から飛び降りてポイントを切り替えようとしました。この時、機関車の速度は時速8マイル（約12.87 km/h）でした。

しかし、機関士がダイナミックブレーキを最大にし、空気ブレーキをかけたまま機関車から飛び降りたところ、思いもよらぬハプニングが発生します。ダイナミックブレーキは正常に機能せず、機関車はフルパワーで無人のまま加速を始めました。機関士は急いで機関車に戻ろうとしたものの、手すりが濡れていたため登ることができず、結局転落してしまいました。これにより、貨物にブレーキがかからない状態で列車は65マイル（約104.61 km）も暴走し続けることとなりました。

事故の経過

列車の暴走は12時35分に始まり、直ちに警察に通報されました。CSX社の副社長が事件の指揮を取る一方、他の経験豊富な機関士が暴走列車に乗り込もうとしましたが、その速度のためにあきらめるほかありませんでした。警察と管制室は、貨車に積載された物資が危険であることを理解し、その後も警戒が強まりました。この貨物には、溶解状態のフェノールが含まれており、取り扱いには細心の注意を要するものでした。

また、暴走列車が下り勾配の急カーブに差し掛かる際には、速度を40 km/h以下に抑えなければならず、そうでなければ脱線のリスクが非常に高まっていました。しかし、8888号はその時点で既に時速100 km/h（約62.14 mph）を超え、脱線の危険が現実のものとなっていました。

やがて、警察と管制室は非常停止スイッチを狙撃することで暴走を止める提案を行いましたが、これも失敗に終わります。機関士は速やかに待避線に入るよう指示を受け、機関車が追いつかれる前になんとか連結して事態を収拾することを目指しました。

解決への道

幸運にも、貨物列車Q96号が暴走列車と同じ本線を進行中であったため、釘付けになることを避けるために待避線に進入するよう指示されました。さらに、Q96号の機関士は暴走列車を追跡する形で、暴走を止めるための作戦を提案しました。この試みが成功し、Q96号はダイナミックブレーキを使用しながら暴走列車への連結を果たします。

結果的に、機関士が8888号のスロットルを操作し、先にQ96号の機関士がブレーキをかけることで、暴走列車は無事停止しました。事故発生から約2時間後の14時30分、オハイオ州ケントンで完全に停止し、大惨事を回避することができました。この事故では死者は出ず、機関士が軽傷を負ったのみでした。

事故の原因

事故の根本的な原因は、機関士がブレーキが作動していると誤信したことにありました。一方で、操車場内での不適切な処置や、一連の規則違反も重なり、悲劇を引き起こす要因となったことは否めません。また、ダイナミックブレーキの設計が操作性に問題を抱えていたことや撮影装置の不備等も影響しました。

エピソード

Q96号の機関士が炎の中に飛び込む覚悟を決める前、彼は妻に電話をかけ「愛している」と告げたことは感動的なエピソードとして語り継がれています。事故を解決した機関士もその後、職場で人々から尊敬される存在となり、家族との関係性が改善されたといいます。

このように、CSX8888号暴走事故は運命的な瞬間に支えられたヒューマンストーリーでもあり、私たちに多くの教訓を与えています。

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