CeCoIn5

CeCoIn5：特異な超伝導特性を持つ物質

CeCoIn5（セリウム-コバルト-インジウム5）は、2.3Kという、セリウムをベースとする重い電子系超伝導体の中では最も高い臨界温度を誇る物質です。その結晶構造は層状となっており、2次元的な電子輸送特性も示す点が特徴的です。

重い電子系化合物としてのCeCoIn5

CeCoIn5は、重い電子系化合物という物質群に属します。この物質群は、電子が非常に重い挙動を示すことで知られています。CeCoIn5の近縁物質として、CeIn3やCeRhIn5が挙げられます。CeIn3は立方晶構造を持ち、10K以下で反強磁性を示します。興味深いことに、外部圧力を加えることでこの反強磁性が抑制され、超伝導状態が出現することが知られています。

CeCoIn5の結晶構造は正方晶であり、CeIn3の結晶構造にCoIn2層が加わったと考えることができます。近縁物質であるCeRhIn5も同様の結晶構造を持ちますが、周囲圧力下では超伝導を示しません。しかし、高圧下では超伝導転移を示し、その臨界温度は2Kを超えます。このように、CeCoIn5とその近縁物質の比較研究は、超伝導発現機構の解明に重要な手がかりを与えてくれます。

CeCoIn5の特異な超伝導特性

CeCoIn5の超伝導状態は、その異方性に特徴があります。磁場の方向によって超伝導状態が大きく変化し、上部臨界磁場（Hc2）は磁場の向きによって異なる値を示します。例えば、[100]方向に磁場を加えた場合は約11.6T、[001]方向では4.95Tとなります。この異方性は、CeCoIn5の結晶構造や電子状態と密接に関連していると考えられています。

さらに、CeCoIn5の超伝導秩序パラメーターは、[走査型トンネル顕微鏡]や分光法(STS)といった実験手法によって、d波対称性を持つことが明らかになっています。d波超伝導は、超伝導ギャップが方向によって異なる値を持つことを意味し、CeCoIn5の特異な超伝導特性を理解する上で重要な要素となっています。

まとめ

CeCoIn5は、その高い臨界温度、層状の結晶構造、2次元的な電子輸送特性、そして異方的でd波対称性を持つ超伝導状態など、多くの興味深い性質を持つ物質です。これらの性質は、基礎物理学、特に超伝導のメカニズム解明に重要な知見を提供するものとして、活発に研究されています。CeCoIn5とその近縁物質の研究は、今後、さらに新しい物理現象の発見や、新しい超伝導材料の開発につながることが期待されています。

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