Chemische Berichte

ドイツ化学界を牽引した学術誌『Chemische Berichte』：その歴史と統合

『Chemische Berichte』（ヘミッシェ・ベリヒテ）は、19世紀後半から20世紀後半にかけて、ドイツにおいて化学研究の中核を担った歴史ある学術誌です。Chem. Ber. あるいは Ber. と略称され、世界中の化学者にとって重要な情報源として長く親しまれてきました。しかし、その歴史は単なる継続ではなく、幾度かの重要な転換点を経ています。本稿では、創刊から終刊に至るまで、『Chemische Berichte』の歩みを詳細にたどります。

創刊と発展期: 1868年、ベルリンの出版社から、ドイツ化学会の会報として『Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft』の名で創刊されました。以降、ドイツ化学界の発展を反映するかのように、その影響力は拡大し、化学研究の進展に大きく貢献しました。

分冊化と第二次世界大戦: 20世紀に入ると、急速に膨張する化学の知見に対応するため、1929年には2分冊化されました。一方、第二次世界大戦の勃発は、1945年から1946年にかけての休刊という事態を招きました。終戦後の1947年、出版社の変更を経て、再び合冊され『Chemische Berichte』として刊行を再開しました。

統合と変革の時代: 1980年代以降、『Chemische Berichte』は新たな局面を迎えます。1985年には出版社がVCH mbHへと移行。その後、1996年にはWileyグループ傘下となりWiley-VCHとなります。1997年には、Wileyが発行していた『Liebigs Annalen』と、オランダの化学雑誌『Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas』との統合が実現し、『Chemische Berichte/Recueil』と改題されました。この統合により、有機金属化学と無機化学に関する論文が中心となりました。有機化学分野は、『Liebigs Annalen/Recueil』へと引き継がれました。

終刊と新たな統合: そして、1998年、欧州の化学系学術誌の大規模な統合が実施されました。『Chemische Berichte/Recueil』は、『Gazzetta chimica italiana』、『Liebigs Annalen/Recueil』、『Bulletin des sociétés chimiques belges』、『Bulletin de la Société chimique de France』など複数の雑誌と統合され、『European Journal of Inorganic Chemistry』に引き継がれることとなります。これにより、長きにわたって化学研究を支えてきた『Chemische Berichte』は、130巻をもってその歴史に幕を閉じました。

『Chemische Berichte』の遺産: 130年にわたる歴史の中で、『Chemische Berichte』は数多くの重要な化学論文を発表し、世界中の化学研究に多大な影響を与えました。その歴史は、単なる学術誌の歴史にとどまらず、ドイツ、ひいては世界化学の発展の歴史そのものと言えるでしょう。その統合は、学術誌のあり方や情報発信のあり方の変化を示唆するものでもあります。時代を超えて、化学研究の進歩に貢献した『Chemische Berichte』の功績は、今後も高く評価されるに違いありません。

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