Cherry blossom (Pritsのアルバム)

cherry blossom

『cherry blossom』は、声優ユニットPritsが2002年12月25日にスターチャイルドから発表した初のオリジナルアルバムです。結果的にPritsにとって事実上最後の作品となり、短期間の活動ながらファンに強い印象を残した彼女たちの活動の集大成として位置づけられています。

アルバムのコンセプトと制作背景

このアルバムは、単にこれまでのシングル曲をまとめたものではありません。既発のシングル「告白“決めてよ!”」や「Private Emotion」の表題曲はあえて収録せず、アルバム全体で一つのまとまった世界観を表現することに重きが置かれました。コンセプトは「いっぱい出てくるフルコース」。様々な味わいを持つ楽曲が次々と現れるような、聴き応えのある構成を目指しています。

収録曲のうち7曲はこのアルバムのために新たに書き下ろされたもので、制作には多様なアイデアが盛り込まれました。特にカバー曲の選定においては、当初「恋のバカンス」の収録が検討されていましたが、メンバーの反対により別の楽曲が採用されるなど、彼女たちの意向が反映された制作過程がうかがえます。

アルバム名とビジュアル

アルバムタイトル『cherry blossom』は、Pritsのデビューシングルである「Sakura Revolution」の「桜」にちなんで名付けられました。桜が咲いた後に実を結ぶように、グループがさらに発展していくことを願う前向きな意味が込められているとされていますが、実はこの由来は後付けなのだそうです。命名の直接的なきっかけは、メンバーの小林由美子さんが何気なく発した「さくらんぼを英語にしたら？」という一言でした。

ジャケット写真は、空気の澄んだ環境にある遊園地内のリカちゃんタウンで撮影されました。ここでは、声優としてではなく、一人の女の子としての、よりプライベートで自然体なPritsメンバー4人の姿を捉えたいという意図があったと語られています。

収録曲ピックアップ解説

アルバムの冒頭を飾る「Sakura Explosion 〜桜楽章〜」は、「Sakura Revolution」をインストゥルメンタルにアレンジした楽曲で、音楽ディレクターが特に力を入れた一曲です。この曲が次に続く「Sakura Revolution」へと滑らかに繋がることで、アルバム全体の始まりを効果的に演出しています。

3曲目の「love MAX」は、アルバムのために書き下ろされた新曲です。メンバー4人全員で歌っていますが、デモテープを聴いた際に水樹奈々さんが「小林由美子さんのための曲だ」と感じたのに対し、小林由美子さん自身は「望月久代さんのためにある曲では？」と語るなど、それぞれの受け止め方が異なる興味深いエピソードがあります。

6曲目の「1・2・3」は、楽曲の間奏部分にメンバーが賑やかに騒ぐ様子が収められており、特に小林由美子さんの「1、2、3、ダー!!」という掛け声が印象的です。メンバーはこの曲のレコーディングが非常に楽しかったと振り返っており、水樹奈々さんも強い思い入れのある曲として挙げています。

7曲目の「願い」は、Pritsメンバーの心の内面を描いたかのような、大人びた雰囲気を持つ楽曲です。

9曲目の「幸せのオブジェ」は、エキゾチックなムードと、幾層にも重なる美しいコーラスが特徴的な楽曲です。

11曲目の「GAMBAらなくちゃね 〜Prits Emotion〜」は、ロックバンドLINDBERGの同名曲をPritsがカバーしたものです。このカバーを通じて、彼女たちの新たな魅力を発見することができます。

アルバムの最後に収録されている「Powder White」は、冬の情景に合う清らかさがあり、アルバムを締めくくるにふさわしい楽曲となっています。

本作に収録されたシングル楽曲に関する詳細な情報は、各シングル（「Sakura Revolution」、「告白“決めてよ!”」、「Private Emotion」）の項目を参照してください。

収録曲リスト

1. Sakura Explosion 〜桜楽章〜 [1:09]
作曲：堀隆、編曲：五島翔
Instrumental曲
2. Sakura Revolution [4:32]
作詞：只野菜摘、作曲・編曲：堀隆
3. love MAX [3:54]
作詞：只野菜摘、作曲：伊藤千夏、編曲：堀隆
4. ダイスキ!! [3:35]
作詞：牧穂エミ、作曲・編曲：水島康貴
5. Frozen Lover [4:22]
作詞：只野菜摘、作曲・編曲：小西貴雄
6. 1・2・3 [3:27]
作詞・作曲：イズミカワソラ、編曲：堀隆
7. 願い [5:26]
作詞：ハギワラセイジ、作曲: ハギワラユウジ、編曲：五島翔
8. Love States 〜ラブ ステイツ〜 [4:19]
作詞：根津洋子、作曲：西崎憲一、編曲：堀隆
9. 幸せのオブジェ [4:02]
作詞：只野菜摘、作曲：Urara、編曲：堀隆
10. Love & Peace [4:55]
作詞：只野菜摘、作曲・編曲：水島康貴
11. GAMBAらなくちゃね 〜Prits Emotion〜 [4:46]
作詞：渡瀬マキ、作曲：小柳昌法、編曲：DECKY
LINDBERG楽曲カバー
12. Powder White [4:54]
作詞・作曲：イズミカワソラ、編曲：五島翔

関連情報

本作に収録されている楽曲「願い」は、後年（2008年放送）のテレビアニメ『今日の5の2』のエンディングテーマとしても使用され、2009年1月7日発売のアルバム『BEST FRIENDS』にも収録されています。また、このアルバムの制作状況や全曲紹介は、『電撃G's Radio』というラジオ番組でも詳しく取り上げられました。スターチャイルドの公式サイトには、『cherry blossom』の特集ページも存在します。

『cherry blossom』は、Pritsというユニットが駆け抜けた軌跡を、色とりどりの楽曲で味わうことができる、ファンにとっては忘れられない一作となっています。

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