Christmas Wish

安室奈美恵楽曲「Christmas Wish」は、一般的なCDシングルやデジタル配信とは異なる、非常にユニークな形で世に送り出された一曲です。2016年のクリスマスシーズンに、大手コンビニエンスストアチェーンであるセブン-イレブンとの共同プロジェクトとして発表されました。この楽曲は、後に彼女のキャリアを締めくくるオールタイムベストアルバム『Finally』に収録され、多くのファンにとって特別な存在となりました。

この楽曲の誕生は、セブン-イレブンが展開した「Magical Christmas」キャンペーンの一環でした。企画内容は、対象となるクリスマスケーキを予約・購入したお客様へ、この楽曲のノーカットフルバージョンをダウンロードできるオリジナルのミュージックカードをプレゼントするというものです。さらに、特定のデコレーションケーキ(ガトー・フレーズ各種やクリスマスかまくらなど)を選んだ購入者には、ミュージックカードに追加して、非売品の特製ポスターも贈られるという、豪華な特典が用意されていました。ただし、ミュージックカードを利用した楽曲のダウンロードには期限が設けられており、2016年12月20日から翌年1月31日までの期間限定でした。この期間を過ぎると、正規の音源を手に入れる手段はしばらく存在しませんでした。楽曲自体は、キャンペーンに先立ち、当時開催中だったコンサートツアー「namie amuro LIVE STYLE 2016-2017」の中でいち早く披露され、ファンの間で大きな話題となっていました。

期間限定の特典としてのみ入手可能だった「Christmas Wish」が、初めて広く一般のリスナーの手に届く形でリリースされたのは、発表から約一年後の2017年11月8日でした。これは、安室奈美恵の集大成となるベストアルバム『Finally』に収録されたことによって実現しました。これにより、多くの人々がこの楽曲を物理的なメディアであるCDで楽しめるようになり、入手のハードルが大きく下がりました。

2017年のクリスマスシーズンにも、「Magical Christmas」企画は継続され、「マジカルメリーゴーランド篇」として展開されました。この年の9月に翌年9月での引退を発表していた安室奈美恵にとって、このキャンペーンはキャリア最後の企業タイアップとなりました。この企画では、楽曲の温かい世界観をイメージしたクリスマスケーキなどが販売されたほか、対象ケーキの購入者には特別な特典が用意されました。それは、楽曲のVRミュージックビデオをダウンロードするためのシリアルコードと、VR視聴用の特製ビューアーでした。このVRミュージックビデオは、テレビCMで使用された映像とは異なり、多数のダンサーや楽団、エキストラが参加する華やかな演出の中で歌唱する様子が臨場感たっぷりに収められています。安室奈美恵自身がVR映像作品に挑戦したのは、この時が初めてのことでした。

この楽曲の最も特筆すべき点の一つは、その異例なチャートアクションです。通常、楽曲が音楽チャートの上位に入るためには、CD販売枚数やデジタル配信によるダウンロード数、ストリーミング再生回数などが重要な要素となります。「Christmas Wish」は、セブン-イレブンの特典という特殊な形態でリリースされ、通常のCD販売や配信プラットフォームでの取り扱いがなかったにもかかわらず、有線放送のリクエストチャートで驚くべき成績を残しました。具体的には、USENリクエスト J-POP HOT30において、2016年12月21日付の週間ランキングで初登場にして1位を獲得したのです。これは、CDシングルとしても、またデジタルダウンロードとしても販売される予定すらなかった楽曲がチャートのトップに立つという、極めて珍しい事例として注目を集めました。さらに、その人気は単なる一過性のものではなく、一年後の2017年12月13日付の同チャートでも再び1位を獲得するという快挙を成し遂げ、楽曲の根強い支持を証明しました。

「Christmas Wish」は、3分58秒の楽曲です。作詞はNiclas Lundin、Maria Marcus、Emyliが、作曲はNiclas LundinとMaria Marcusが手掛けています。編曲はMaria Marcus、Niclas Lundin、Cobra Endo、ats-が担当し、音楽プロデュースをCobra Endoが、全ての楽器演奏をats-が行っています。

セブン-イレブンとの特別なコラボレーションから生まれ、期間限定の特典提供、そしてベストアルバムへの収録という独特のリリース遍歴を辿った「Christmas Wish」。CDや配信がない状態でも有線放送チャートで異例の1位を複数回獲得するなど、その楽曲力と安室奈美恵というアーティストの特別な存在感を改めて示す一曲となりました。安室奈美恵のキャリアを彩る楽曲群の中でも、クリスマスシーズンに欠かせない、ファンにとって思い入れの深い一曲として、今もなお多くの人々に聴かれ続けています。

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