CorelDRAW

CorelDRAW：ベクターグラフィックデザインの定番ソフトウェア

CorelDRAWは、カナダのCorel社が開発・販売するベクターグラフィック編集ソフトウェアです。1989年の初版リリース以来、デザイン業界のプロフェッショナルからアマチュアまで幅広く利用され、高い人気を誇っています。WindowsとmacOSに対応しており、ポスター、パンフレット、ロゴ、イラスト、Webデザインなど、多様なデザイン制作に使用可能です。

CorelDRAWの歴史

CorelDRAWの起源は、1985年にマイケル・コープランド博士が設立したCorel社に遡ります。初期バージョンは「Waldo」という開発コードネームで知られており、特徴的なマスコットキャラクターがパッケージを飾っていました。その後、バージョンを重ねるごとに機能が強化され、インターフェースも進化を遂げています。MacOS版は長らくリリースされていませんでしたが、2019年に18年ぶりの復活を果たしました。また、Linux版も過去には存在しましたが、現在は販売されていません。
パッケージデザインも、初期の気球から女性やペン、カメレオンと変化に富み、バージョン2018以降は再び気球がデザインの中心となっています。

CorelDRAWの特徴

CorelDRAWは、ベクトルベースの編集ソフトウェアとして、以下のような特徴を持っています。

多様なファイル形式への対応: DXF、AIなど、幅広いファイル形式の読み込みと書き出しに対応しています。これは、他のソフトウェアとのデータ共有をスムーズに行う上で大きな利点となります。
Excelとの連携: 表計算ソフトExcelとの連携機能が備わっており、Excelのデータを直接CorelDRAWに取り込むことができます。これは、グラフや表などを含むデザインを作成する際に非常に便利です。
豊富なツール: 寸法線ツールなど、デザイン作業を効率化する様々なツールが搭載されています。特に寸法線ツールは、Illustratorなどには標準搭載されていないため、CorelDRAW独自の強みと言えるでしょう。
直感的なインターフェース: Windowsに最適化されたインターフェースは、直感的で操作性に優れています。右クリックメニューが豊富で、多くの作業をクリック操作だけで完結できます。
コストパフォーマンス: Illustratorのようなサブスクリプション型ではなく、買い切り型のソフトウェアであるため、長期的な使用を考えるとコストパフォーマンスに優れています。ただし、プラグインの数はIllustratorに比べて少ないのが現状です。
充実した学習リソース: 解説書は少ないものの、Corel社は5時間以上の解説動画やスタートガイドなどを提供しています。

他社製品との比較

CorelDRAWは、Adobe Illustrator、そして日本市場では「花子」といったソフトウェアとよく比較されます。Illustratorは業界標準として高いシェアを誇りますが、CorelDRAWは買い切り型という点でコスト面での優位性があります。一方、プラグインや解説書の数はIllustratorに劣ります。

バージョンごとの機能強化

CorelDRAWは、長年にわたって継続的にアップデートされ、多くの新機能が追加されてきました。主なバージョンと、その特徴的な機能強化を以下に示します。

バージョンX3 (2006年): 星形・多角形ツール、スマート塗りつぶしツールなど、デザイン制作の効率性を高める多数の新機能が追加されました。
バージョンX4 (2008年): テーブルツール、ページごとのレイヤー機能などが追加され、複雑なレイアウトの作成が容易になりました。
バージョンX5 (2010年): 属性スポイトツール、Bスプラインツールなど、より高度なデザイン制作に対応できる機能強化が行われました。
バージョンX6 (2012年): Windows 8 64bitネイティブ対応、マルチコアCPU対応など、パフォーマンスの向上が図られました。
バージョンX7 (2014年): インターフェースが刷新され、使いやすさが向上しました。
バージョンX8 (2016年): リアルタイムスタイラス対応、5Kディスプレイ対応など、最新のハードウェアに対応した機能強化が図られました。
バージョン2017 (2017年): AIを活用したLiveSketchツールが追加され、スケッチをベクターデータに変換する機能が強化されました。
バージョン2018 (2018年): 対称描画モード、ブロックシャドウツールなど、デザイン制作の幅を広げる新機能が追加されました。
バージョン2019 (2019年): macOS対応、MicrosoftストアとMac App Storeでの販売開始など、プラットフォームの拡大が図られました。
バージョン2020 (2020年): PowerTRACEへのAI搭載、アートスタイル効果など、AI技術を活用した機能強化が図られました。

CorelDRAW Graphics Suiteと廉価版

現在、CorelDRAWは単体では販売されておらず、「CorelDRAW Graphics Suite」というパッケージの一部として販売されています。また、より低価格で購入できる「CorelDRAW Essentials」シリーズも存在し、こちらは機能が限定されています。さらに、両者の中間的な製品として「CorelDRAW Standard」もラインナップされています。

まとめ

CorelDRAWは、長年にわたる開発の歴史と、継続的な機能強化によって、多くのデザイン用途に対応できる高機能なベクターグラフィック編集ソフトウェアです。買い切り型であるコストパフォーマンスの高さ、直感的なインターフェース、そして豊富な機能は、多くのユーザーに支持されている理由です。

もう一度検索