Cranberry Soda

河村隆一、ソロ活動の幕開けを飾る記念碑的ミニアルバム『Cranberry Soda』

1997年6月21日、河村隆一のソロ活動の新たな地平を切り開いたミニアルバム『Cranberry Soda』がリリースされました。 これは、LUNA SEAでの活動を経て、ソロアーティストとして歩み始めた河村隆一にとって、最初のミニアルバムという重要な作品です。元SOFT BALLETの藤井麻輝氏との共同制作という点も、本作に独特の輝きを与えています。

特筆すべきは、本作がソロ名義としては初のオリジナル楽曲のみで構成された作品である点です。 同年11月に発売されたオリジナルアルバム『Love』は、既発曲が多く収録されていましたが、『Cranberry Soda』は、シングル曲やカップリング曲、他アーティストへの提供楽曲を一切含んでいません。にも関わらず、70万枚を超える驚異的な売上を記録しました。この事実は、河村隆一の高い音楽性と、ソロアーティストとしての彼の潜在能力の高さを証明しています。

さらに興味深いのは、歌詞カードのデザインです。全7曲の歌詞は、曲ごとに異なる書体で表記されています。1、2、5曲目にはゴシック体、3、4、7曲目には明朝体が使用されており、この細かいこだわりも、作品全体の完成度を高める要素となっています。

個性豊かな7曲のオリジナル楽曲

では、各楽曲について見ていきましょう。

TWINKLE：軽快でポップな印象の楽曲。
BALLOON：タイトル通り、軽やかな浮遊感を感じさせる楽曲。1997年の武道館公演では、河村隆一がステージ上を跳ね回るほどのパフォーマンスで聴衆を魅了したと伝えられています。また、『Love』に収録されているライブ音源「でも淋しい夜は…」のアウトロでは、この曲のイントロが使用されているという繋がりがあります。
ORANGE：後に同名タイトルのアルバムが発売されるほど、重要な楽曲と言えるでしょう。
REAL：力強いサウンドが印象的な楽曲。アルバム収録バージョンとは異なる「ノイジーバージョン」も制作されていたというエピソードがあります。
RED：情熱的な楽曲。詳細な情報は少ないものの、他の楽曲と同様に高い完成度を誇るものと思われます。
DEMO：本作の最大の特徴と言えるのが、この「DEMO」です。ラジカセで録音したかのような粗削りな音質で、歌詞はなく、「ラララ」という歌声のみで構成されています。収録時間は約1分50秒と非常に短く、本作中最短の楽曲です。この曲は、LUNA SEA時代とは異なる、ソロ活動における河村隆一の挑戦的な姿勢を表しています。河村隆一自身、LUNA SEAでは常に完成度の高い作品作りを心がけてきましたが、ソロではあえて未完成な状態の楽曲を発表することで、新しい表現の可能性を探求しようとしたのです。後に「でも淋しい夜は…」としてフルバージョンが発表され、イントロなどが加えられ4分半近い長さとなっています。
* SE,TSU,NA,：シングルカットこそされませんでしたが、後にベストアルバムに収録される程の人気楽曲です。

『Cranberry Soda』は、河村隆一のソロとしての可能性を示すだけでなく、音楽における新たな表現方法、そしてアーティストとしての彼の探究心を感じさせる、記念碑的な作品と言えるでしょう。7曲というコンパクトな収録時間でありながら、多様な楽曲群と、細部へのこだわりが凝縮された、聴き応えのあるミニアルバムです。 その後のソロ活動、そしてアーティストとしての河村隆一の軌跡を語る上で、欠かすことのできない作品として、長く愛され続けるに違いありません。

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