D65光源

CIE標準光源D65：昼光を再現する光源

CIE標準光源D65（D65）は、[国際照明委員会]が定めた標準光源の一つです。この光源は、ヨーロッパや北欧における正午の屋外光、つまり直射日光と空からの拡散光を合わせた状態を再現することを目的として定義されました。そのため、昼光光源とも呼ばれています。

D65は、実際には存在せず、その分光分布をシミュレートした疑似光源として用いられます。この分光分布は、300nm～830nmの波長範囲で、5nm間隔のデータとして定義されています。元々は10nm間隔でしたが、線形補間によって5nm間隔のデータが作成され、利用されています。CIEは線形補間を推奨していますが、スプライン補間も提案されています。

D65の定義と色度

D65は、その分光分布だけでなく、色度座標によっても定義されます。CIE 1931 2°測色標準観察者を用いると、その色度座標はx = 0.31271、y = 0.32902となります。また、相対輝度Yを100とした場合の三刺激値は、X = 95.047、Y = 100.00、Z = 108.883となります。

CIE 1964 10°測色標準観察者では、x = 0.31382、y = 0.33100となります。D65は白色光を表すため、これらの座標は白色点となります。

相関色温度：6504Kの謎

D65の名称から、相関[色温度]が6500Kだと誤解されがちですが、実際は6504Kです。このわずかな違いは、プランクの法則の定数が、D65が定義された後に改訂されたことが原因です。定数の改訂によって黒体軌跡が変化し、結果としてCCTにも影響が出たのです。

この現象は、D50、D55、D75といった他のDシリーズ標準光源にも見られます。元のCCTに1.4388/1.438を乗じることで、改訂後のCCTを近似的に求めることができます。例えば、D65の場合、6500K × (1.4388/1.438) ≒ 6503.6Kとなります。

D65の経緯

CIEは1931年に、標準光源A（白熱電球）、B（昼光、直接光）、C（昼光、間接光）を導入しました。しかし、これらの光源は実際の昼光を十分に再現できていませんでした。そこで、1967年、ジャッド、マクアダム、ワイスゼッキらの提案に基づき、昼光をより正確にシミュレートするDシリーズの標準光源が定義されたのです。D65はその一つであり、現在では様々な分野で利用されています。例えば、HDTV規格であるRec.709では、CIE 1931座標においてx=0.3127、y=0.329に丸められたD65が用いられています。

まとめ

D65は、屋外昼光を再現するCIE標準光源であり、その分光分布や色度座標が厳密に定義されています。6504Kという相関色温度は、プランクの法則の定数改訂によるものです。D65は、画像処理やディスプレイのキャリブレーションなど、様々な分野で重要な役割を果たしています。

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