DANCE TO YOU

『DANCE TO YOU』は、サニーデイ・サービスが2016年8月3日に発表した通算10枚目のスタジオアルバムです。前作『Sunny』から約1年10ヶ月ぶりとなる本作は、バンド史上最も長い制作期間を費やして制作されました。ライブアルバムやリマスター盤を挟み、満を持してリリースされたこのアルバムは、先行シングル「苺畑でつかまえて」を含む全9曲が収録されています。

本作はCDに加え、アナログ盤とカセットテープの3形態で同時発売され、ROSE RECORDSのオンラインショップで予約受付が開始、その後発送されました。また、通常音質とハイレゾ音源の2種類の配信も同時にスタートしています。

アルバム制作は、当初はアナログテープを用いて短期間で録音する予定でしたが、ドラマーの体調不良による離脱やスタジオでのトラブルなど、困難に見舞われます。結果として、曽我部恵一自身が自宅や練習スタジオでPro Toolsを用いて録音作業を行うことになりました。ドラムを自ら演奏したり、必要に応じて他のミュージシャンに演奏を依頼するなど、従来のバンドスタイルとは大きく異なる制作プロセスとなりました。曽我部は、「普段の生活と線引きできないようなレコーディングになった」と語り、初期のバンド的なグルーヴの追求から、作品作りそのものの本質に立ち返る経験になったと述べています。

曽我部によれば、「桜 super love」の完成を機に制作がスムーズに進み始めたとのこと。ダンスミュージックに寄せたサウンドを意識し、聴く人が「感動したり、泣いたりとかじゃなく、“軽い”ほうが今はいい」という思いで制作されたそうです。「良い音楽はすべからくダンスミュージック」という考えから、あえてダンスミュージックを標榜することに意味があるとも語っています。

また、アルバム制作においては、「説得力や重み」を出すことを避け、常に「新品」であるような音楽を追求したと述べています。初期段階ではサイケデリックな組曲を含む多様な音楽性が試みられたものの、最終的には手癖や技術的な要素を排除し、よりシンプルで新しい音楽を目指したとのことです。

アートワークは、小田島等がデザインを担当し、イラストレーションには永井博が起用されました。曽我部は、永井博の作品が持つ時代性と普遍性を評価し、「流行に乗る」ことの意義を語っています。CDはスリーブケース仕様でミニポスター付き、アナログ盤は紙ジャケット仕様でミニポスター付き、カセットテープは紙スリーブケース仕様です。いずれのアイテムにも、ROSE RECORDSの先着特典として曽我部恵一のインストミニアルバムCD『MARINE BOOK e.p.』が付属しました。

『DANCE TO YOU』は、音楽雑誌『レコード・コレクターズ』2017年1月号の「特集 アルバム・ベスト2016」で“ロック[日本]”部門で4位に選ばれ、「下世代のシティ・ポップに触発されて生まれた、全く新しい方向性を示す充実の10作目」と評されました。また、音楽評論家の柴那典は、2016年のベストアルバムの一つとして本作を挙げ、「喪失を乗り越えること」をテーマにした作品として評価しています。

収録曲は、CD、アナログ盤、カセットテープ共通で、「I'm a boy」、「冒険」、「青空ロンリー」、「パンチドランク・ラブソング」、「苺畑でつかまえて」、「血を流そう」、「セツナ」、「桜 super love」、「ベン・ワットを聴いてた」の9曲です。また、「お土産用 DANCE TO YOU」として、収録曲のリミックスアルバムもリリースされました。このリミックスアルバムには、様々なアーティストによるリミックスが収録されており、後にアナログ盤としても発売されています。

『DANCE TO YOU』は、サニーデイ・サービスの新たな音楽性を提示しただけでなく、制作過程における試行錯誤や葛藤、そしてそこから生まれた音楽の力強さを感じさせる作品です。音楽ファンだけでなく、創造的な活動に携わる人々にとっても、刺激的な一枚と言えるでしょう。

もう一度検索