DF-11 (ミサイル)

DF-11 短距離弾道ミサイル

中国によって開発された短距離弾道ミサイル（SRBM）であるDF-11は、中国語で「東風-11」（Dong-Feng-11）と表記され、輸出向けにはM-11という名称が用いられています。アメリカ国防総省（DoD）による識別コードはCSS-7です。このミサイルシステムは、現在、中国人民解放軍のロケット軍（かつての第二砲兵部隊）によって主要な短距離弾道ミサイルとして運用されています。

開発と輸出

DF-11の開発は1970年代後半に始まり、当初から輸出市場も視野に入れて設計されたとされています。特に注目すべき輸出実績として、1990年代初頭の1992年から1994年にかけて、約55基がパキスタンに供給されました。これらのミサイルは、後にパキスタンが独自開発した短距離弾道ミサイル「ガズナヴィ（Hatf-III）」の技術的基盤の一つとなったと考えられています。パキスタンへのDF-11の存在は、1992年にアメリカ合衆国の偵察衛星によって初めて確認され、これにより同国での配備が明らかとなりました。

派生型と性能向上

DF-11には複数の仕様が存在します。初期型であるDF-11の射程は約300km程度でしたが、1990年代に登場した改良型のDF-11Aでは、射程が500kmに延伸されました。DF-11Aは、従来の慣性誘導に加え、GPS誘導システムを搭載することで命中精度が飛躍的に向上しています。初期型のDF-11のCEP（半数必中界、ミサイルの半数が着弾すると見込まれる範囲の半径）が500～600メートルであったのに対し、DF-11Aでは200メートルにまで精度が改善されました。また、比較的低コストであるためか、この改良型であるDF-11Aは大量に配備されていると言われています。

配備状況

中国国内では、特に台湾海峡に面する福建省に、台湾に対する抑止力として位置づけられていると見られるDF-11シリーズが500基以上配備されていることが確認されています。

移動式発射システム

本ミサイルは、自走可能な移動式発射台（TEL: Transporter Erector Launcher）から発射されます。主に用いられるのは、中国の万山特殊車両が1980年代に旧ソビエト連邦製のMAZ-543 TELを基盤として開発したWS2400 8x8重輸送車です。この車両は、ミサイルの機動的な運用を可能にし、敵からの探知・攻撃に対する生存性を高める役割を担っています。

主要諸元

以下に、DF-11シリーズの主要な仕様を示します。

射程:
DF-11: 280-350km
DF-11A: 500km
エンジン: 単段式固体燃料ロケット
誘導システム:
DF-11: 慣性誘導
DF-11A: 慣性誘導 + GPS
CEP (半数必中界):
DF-11: 500-600m
DF-11A: 200m
全長:
DF-11: 7.5m
DF-11A: 8.5m
直径: 0.8m
重量: 4,200kg
ペイロード: 500kg
* 発射準備期間: 15-30分

DF-11は、中国の短距離弾道ミサイル戦力において重要な位置を占めるシステムであり、その改良型であるDF-11Aは、射程と精密誘導能力の向上により、より実戦的な兵器となっています。輸出実績も有しており、国際的な兵器市場においても一定の影響力を持ったミサイルです。

もう一度検索