DF-2 (ミサイル)

DF-2（東風2号）とは

DF-2（東風2号、中国語: 东风-2、Dong-Feng-2）は、中華人民共和国が開発した初期の準中距離弾道ミサイル（MRBM）です。アメリカ国防総省（DoD）による識別番号はCSS-1です。

開発経緯

R-2ミサイルのライセンス生産

1956年、中国は弾道ミサイル開発計画を開始し、国防部下に第五研究院（現在の中国航天科技集団公司）を設立しました。翌1957年、ソ連との間で中ソ新防衛技術協定が締結され、R-2ミサイル2基と技術指導チームが中国に派遣されました。しかし、中ソ関係の悪化により、ソ連の技術チームは1958年に帰国しました。

その後、ソ連から提供された設計図や技術資料を基に、R-2ミサイルのライセンス生産が開始されました。このライセンス生産されたミサイルは当初「1059」と名付けられましたが、後に「DF-1（東風1号）」と改称されました。中国は、DF-1の生産と並行して原子爆弾の開発も進め、1964年に初の核実験を成功させました。これにより、核弾頭を搭載可能な弾道ミサイルの開発が重視されるようになりました。

しかし、DF-1は射程が短く、核弾頭を搭載するには運搬能力も不足していたため、第五研究院は1958年に射程2,000km、ペイロード1,500kgの新型ミサイル「東風計画」を提案しました。

新型推進剤のミサイル計画

新型ミサイルは、ソ連のR-12ミサイルを参考に開発される予定でしたが、ソ連はR-12の売却を拒否しました。しかし、モスクワに留学していた中国人学生たちは、R-12に関する情報を得るためにソ連の研究者たちに積極的に質問を重ねました。その結果、R-12と同様の常温貯蔵が可能な推進剤、赤煙硝酸（AK-20）と自己着火性の燃料（TG-02）を使用する計画が立てられました。また、エンジンには4基のクラスターエンジンが採用される予定でした。留学生たちは、エタノール溶液と液体酸素を用いる従来型のミサイルR-5についても同様の方法で情報を収集していました。

技術的冒険の回避

中ソ関係の悪化により、中国は技術的なリスクを避け、R-2やDF-1を基にした従来型のミサイル開発に重点を置くようになりました。その結果、開発されたのがDF-2（東風2号）です。DF-2の射程は1,200kmで、R-2を改良したソ連のR-5と類似していました。中国政府は、1961年10月1日の建国記念日までに発射試験を行うよう指示しましたが、開発は遅れました。1962年3月21日の最初の発射試験は失敗しましたが、エンジンの推力を調整することで、1964年6月29日に発射試験を成功させました。しかし、射程は1,050kmに縮小され、西日本の一部が射程圏内に入る程度でした。

改良型の開発

中国は核弾頭搭載ミサイルの早期開発を諦めず、DF-2の改良を続け、射程を1,250kmに延長したDF-2A（東風2号甲型）を開発しました。1965年11月にDF-2Aのミサイル自体の発射試験は成功し、1966年9月16日から第二砲兵部隊への配備が開始されました。1966年10月27日には、核弾頭を搭載したDF-2Aの発射実験に成功し、中国初の核ミサイルシステムが実証されました。

技術的特徴

DF-2は、R-2やDF-1を拡大発展させたミサイルです。推進剤タンクは、直径はそのままに長さを延長することで容量を増やしています。このため、DF-1に比べて細長い外観をしています。推進剤タンクの配置は、R-2やDF-1とは逆に、上に液体酸素、下にエタノール溶液となっています。

エンジンは、R-5のエンジンであるRD-103型を参考に開発されたと推測されています。DF-2の発射試験ではエンジンの耐久性が問題となり、推力を約10%下げる設計変更が行われました。エンジンには、R-101型と同様のヴァルター式ターボポンプが採用されたと考えられています。

弾頭は分離式で、通常弾頭（1,500kg）または核弾頭（15～20kT）を選択できます。誘導方式は、慣性航法装置を用いた慣性誘導が採用されました。操舵方式は、ジェットベーン方式が用いられています。

性能

DF-2の最大射程は1,050km、改良型DF-2Aは1,250kmです。命中精度は不明ですが、同世代のソ連のR-5ミサイルはCEPが2,000mとされています。ペイロードは、DF-2、DF-2Aともに1,500kgです。

配備

DF-2の開発開始は1960年6月、DF-2の最初の発射試験成功は1964年6月29日、DF-2Aの最初の発射試験成功は1965年11月です。DF-2は配備されず、DF-2Aは1966年9月15日に配備が開始され、1971年に製造が終了し、1979年に退役しました。

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