DF-3 (ミサイル)

DF-3弾道ミサイル：中国の準中距離ミサイル開発の軌跡

概要

DF-3（東風3号、DoD識別番号CSS-2）は、[中華人民共和国]]が開発した準中距離弾道ミサイル]です。1960年代から開発が進められ、[[核弾頭および通常弾頭を搭載可能な能力を備えていました。改良型のDF-3Aは射程と精度の向上を実現し、中国軍の戦略兵器として重要な役割を果たしました。本稿では、DF-3の開発経緯、技術的特徴、配備状況、そしてサウジアラビアへの輸出といった側面に焦点を当て、その歴史と意義を多角的に考察します。

開発の歩み：ソ連からの独立へ

DF-3の開発は、1960年代初頭、中国とソ連の関係悪化という国際情勢を背景に始まりました。当初、ソ連の技術協力を期待していましたが、その関係悪化により、中国は独自技術での開発を余儀なくされました。開発計画は、酸化剤に常温貯蔵可能な赤煙硝酸、燃料にUDMHを用いるなど、当時としては先進的な技術を取り入れていました。1964年には、フィリピン米軍基地への攻撃を視野に射程やペイロードが拡大され、1966年には初の実験発射に成功。その後、核弾頭開発も進み、1971年から人民解放軍第二砲兵部隊への配備が始まりました。

技術的特徴：高性能と危険性の両面

DF-3とDF-3Aは、全長21.2m、直径2.25mの単段式ミサイルで、特徴的なクリップドデルタ翼を持つ安定板を備えています。常温貯蔵可能な推進剤の使用は、液体酸素を用いる従来のミサイルに比べ、発射準備時間の短縮に貢献しました。一方で、赤煙硝酸とUDMHは極めて毒性が高く、取り扱いには高度な化学防護技術が求められました。4基のエンジンをクラスター化することで、高い推力を実現。誘導方式は、当初は電波誘導でしたが、後に慣性誘導方式へと改良されました。弾頭は核弾頭と通常弾頭の両方が搭載可能で、改良型では核弾頭の軽量化により射程の延長が図られました。

発射と配備：戦略的拠点への配置

DF-3の発射には、ミサイルの起立、アラインメント、推進剤注入、最終的な目標データ入力といった複数のステップが必要です。多数の支援車両が必要となる複雑な手順でしたが、発射準備時間の短縮に向けた改良が続けられ、150分程度にまで短縮されました。配備場所は、中国各地の軍事基地でしたが、後継ミサイルの配備に伴い、徐々に数が減少し、最終的には1ヶ所のみとなりました。

性能と射程：改良による性能向上

DF-3の基本型は最大射程約2,650km、CEP(円確率偏差)2,000mとされています。改良型DF-3Aは、核弾頭搭載時で最大射程約2,800km、通常弾頭搭載時では弾頭重量によって射程が異なり、CEPも1,000mへと向上しました。射程の延長は、核弾頭の軽量化が大きく貢献しています。

サウジアラビアへの輸出：国際的な影響

DF-3はサウジアラビアにも輸出され、通常弾頭型のDF-3Aが大量に配備されました。これは、サウジアラビアの軍事力強化に大きく貢献し、また、中国の軍事技術輸出の成功例の一つとなりました。この輸出には、当時のサウジアラビア高官の尽力があったとされ、中国とサウジアラビアの関係強化に重要な役割を果たしたと見られています。しかし、この取引については、様々な憶測や論争も存在しており、歴史的な背景を理解する上で重要な要素となっています。

結論：中国軍事力の象徴

DF-3ミサイルは、中国のミサイル技術開発の進歩を示すだけでなく、冷戦期における国際情勢や、中国の軍事力増強、そして国際関係に大きな影響を与えた重要な兵器でした。その開発から配備、そしてサウジアラビアへの輸出といった歴史を振り返ることで、中国の軍事力近代化の過程や、国際政治における複雑な力関係を理解することができます。その技術的側面だけでなく、政治的、経済的、そして外交的な文脈においても、DF-3は重要な意味を持つと言えるでしょう。

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