DIVORCE/ディボース

アメリカの有料ケーブルテレビ局HBOで2016年から2019年にかけて放送された連続テレビドラマシリーズ、『DIVORCE/ディボース』（原題：Divorce）。全3シーズンにわたり制作された本作は、長年連れ添った夫婦が直面する避けられない現実、すなわち「離婚」をテーマに、その過程で巻き起こる人間模様を、時にユーモラスに、時に現実的な視点から描き出しています。

物語の舞台となるのは、ニューヨーク州郊外に位置する閑静な住宅街、ヘイスティングス・オン・ハドソンです。主人公は、二人の子供を持つ中年夫婦、フランシスとロバート。かつては愛情を育んでいた二人ですが、結婚生活は長い時間を経て冷め切り、すでに破綻寸前の状態にありました。マンハッタンの人材派遣会社に勤める傍ら、母親でもあるフランシスと、金融業界から転身し地元で大工として働くロバートは、倦怠期を通り越し、もはや関係修復は困難な状況にありました。

物語の始まりは、現状に耐えきれなくなった妻フランシスが、夫ロバートに対して離婚を提案するところから幕を開けます。フランシス自身は、できることなら円満な形で区切りをつけたいと願っていました。しかし、フランシスが抱えていた秘密、特に不倫の事実がロバートに知られてしまったことで、事態は思わぬ方向へと転がり始めます。当初の円満な離婚という希望は打ち砕かれ、夫婦間の問題は、彼らの周囲にいる友人たちや、それぞれが雇った弁護士をも巻き込みながら、静かに、しかし確実に迷走を深めていくのです。ドラマは、離婚という一つの出来事が、夫婦だけでなく、その家族や友人たちの関係性、そしてそれぞれの人生にどのような影響を与えていくのかを多角的に描きます。

本作には、個性豊かで魅力的なキャスト陣が集結しています。主人公のフランシス・デュフレーンを演じるのは、『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリー役で一世を風靡したサラ・ジェシカ・パーカーです。彼女は本作で主演を務めるだけでなく、製作総指揮としても作品に関わっています。もう一人の主人公である夫、ロバート・デュフレーンを演じるのは、『サイドウェイ』などの出演で知られるトーマス・ヘイデン・チャーチ。長年の結婚生活で蓄積された疲労感や、離婚を巡る複雑な感情をリアルに演じきっています。また、フランシスの友人であるダイアン役にはモリー・シャノン、離婚経験者としてフランシスを支えるダラス役にはタリア・バルサム、ロバートの友人でもあるニック役にはトレイシー・レッツといった実力派俳優たちが配され、物語に深みと彩りを加えています。

夫婦の子供たちも、この騒動の渦中にいます。長女のライラは、父親に懐いているパパっ子で、両親の離婚問題から母親への反抗期を迎えます。一方、長男のトムは、典型的なティーンエイジャーとして、どこか両親の騒動に対して無関心な様子を見せます。彼らの視点からも、家族の崩壊が子供たちに与える影響が描かれます。

さらに、フランシスの不倫相手であるジュリアン・ルノーや、ロバートの弁護士であるトニー・シルヴァークリーク、フランシスの弁護士マックス・ブロドキンなど、様々な人物が登場し、離婚を巡る法的な駆け引きや感情的な対立が描かれます。ロバートと急接近する不動産レディのジャッキーや、夫婦それぞれの友人、家族といったリカーリングキャラクターたちも、物語のリアリティを高める重要な要素となっています。

本作は、サラ・ホーガンが原作と製作総指揮を務め、ポール・シムズや主演のサラ・ジェシカ・パーカーらも製作に名を連ねています。プロダクションはHBOエンターテイメントが担当し、洗練された映像と音楽で、ニューヨーク郊外の生活と離婚という普遍的なテーマを描き出しました。コミカルな要素を含みながらも、中年夫婦が迎える現実的な問題や、それに伴う苦悩、そして再生への道のりを描いた秀作と言えるでしょう。

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