DPAマイクロホン

DPAマイクロホン

DPAマイクロホン（DPA Microphones）は、デンマークに本拠を置く、プロフェッショナル市場向けの高性能マイクロホンおよび関連ソリューションの製造・販売を手がける企業です。現在はアメリカの投資会社The Riverside Companyの傘下にあります。旧称はDanish Pro Audio。

沿革と発展

DPAマイクロホンの起源は1992年、高精度計測機器メーカーとして知られるブリュエル・ケアー社（Brüel & Kjær、略称B&K）の元従業員であったモーテン・ストーブ氏とオーレ・ブローステッド・ソレンセン氏によって設立されたことに遡ります。当時、B&Kがプロオーディオ部門からの撤退を決めた際、両氏は同社と契約を交わし、この分野の販売、サービス、開発の事業を引き継ぐ形でDPAを立ち上げました。

創業当初、DPAは主にスタジオ録音や放送向けのハイエンドなコンデンサーマイクロホンに特化しており、B&K時代の高い技術水準を受け継いだ製品で評価を得ました。特に、TEC賞を受賞したB&K 4011カーディオイドマイクは、DPAの技術的基盤を示す製品の一つと言えます。

転機となったのは1995年です。DanaBallerina（後のMuphone）のダン・インゲマン・ジェンセン氏およびイェンス・ヨーン・ストックホルム氏との協業により、DPA 4060および4061といった画期的なミニチュアマイクロホンを共同開発しました。これらのマイクロホンは、その極めて小型なサイズにも関わらず、フラットな周波数特性と優れた音響性能を実現しており、隠蔽設置が求められる劇場用途に最適でした。その結果、ニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドといった世界の主要な劇場で急速に採用され、演劇やミュージカルにおけるマイクロホンの新しい標準を確立しました。この成功は、DPAのブランド名を世界に広める大きなきっかけとなりました。

製品と技術

DPAマイクロホンは、長年にわたり培ってきた音響測定技術と独自の設計哲学に基づき、幅広い用途に対応する高性能マイクを提供しています。主要な製品ラインナップには、スタジオレコーディング、ライブサウンド、放送、映画制作、会議システム、そして楽器収音など、多岐にわたる分野で使用されるマイクロホンが含まれます。

特に知られているのは、先述のミニチュアシリーズ（4060, 4061など）、ヘッドセットマイク（4066, 4088, d:fineなど）、楽器収音用マイク（d:vote 4099など）、そして高い音響性能を誇るスタジオ・ライブ用のコンデンサーマイク群（Reference Standardシリーズ、2011Aなど）です。また、モバイルサラウンドマイク5100のような革新的な製品も開発しています。これらの製品は、原音忠実性の高さ、クリアな音質、堅牢性、そして用途に応じた多様なアクセサリーとの組み合わせにより、プロフェッショナルから絶大な信頼を得ています。

評価と受賞歴

DPAマイクロホンの製品は、その優れた性能と革新性から、世界中で数多くの権威ある賞を受賞しています。創業の基盤となったB&K時代のTEC賞受賞から始まり、ミニチュアシリーズの成功以降も、ヘッドセットマイク、ステレオマイクキット、楽器用マイク、サラウンドマイク、そしてリファレンス標準シリーズなど、様々なカテゴリーの製品が繰り返し評価を受けています。音響技術・製品に贈られるTEC賞への多数のノミネートおよび受賞は、業界におけるDPAの技術力の高さを証明しています。

また、企業の功績に対しても評価されており、デンマークのフレデリック9世賞といった名誉ある賞を受賞しています。これらの受賞歴は、DPAがプロオーディオ分野においてリーディングカンパニーとしての地位を確立していることを示しています。

現在

DPAマイクロホンの本社はデンマークのAllerødに位置し、生産工場は同じくデンマーク国内のAsnæsにあります。製品の設計、開発、製造はすべてデンマーク国内で行われており、高い品質基準を維持しています。現在のCEOはカレ・フヴィット氏（Kalle Hvidt）です。世界中のプロフェッショナルに高品質なサウンドを提供し続けています。

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