DXコード

DXコードとは

DXコード（正式名称：CASコード）は、35mmフィルム（135フィルム）パトローネに設けられた電気接点であり、フィルムの感度や撮影枚数などの情報をカメラに伝達する役割を担っています。1983年にアメリカのイーストマン・コダック社によって規格化され、世界中のフィルムメーカーで広く採用されました。DXコード対応のカメラにDX接点付きのフィルムを装填すると、フィルム感度や撮影枚数が自動的に設定されるため、撮影者はより簡単に撮影を楽しむことができます。

構造と規格

DXコードの接点は、12個のマス目状に配置されており、パトローネを正面から見て右上に位置します。パトローネは通常金属製で導電性があり、この性質を利用してマス目にプリントパターンで情報を記録しています。カメラは、フィルム室内に設けられた接点で各マス目が導通しているか絶縁されているかを読み取ることで、フィルムの情報を取得します。

接点は4つのエリアに分かれており、1番と7番はグランドとして必ず導通しています。残りの3つのエリアには、感度情報、撮影枚数情報、ラティチュード情報が記録されています。

感度情報

2番から6番の接点には、フィルムの感度情報が記録されています。ISO25から5000までの感度に対応しており、さらに8つまでのカスタム設定が可能です。各マス目の導通パターンによって、カメラはフィルムのISO感度を読み取ります。

撮影枚数情報

8番から10番の接点には、撮影枚数が記録されています。設定可能な枚数は12枚、20枚、24枚、36枚です。ただし、27枚撮りのフィルムはDXコードの規格に含まれていないため、この部分の接点は絶縁されており、枚数情報を読み取ることができません。

ラティチュード情報

11番と12番の接点には、フィルムのラティチュードが記録されています。リバーサルフィルムは±0.5段、ネガフィルムは+3段/-1段に設定されるのが一般的ですが、プロ用フィルムなどでは異なる設定のものもあります。

富士フイルム製品の独自仕様

1970年代後半からDXコード導入まで、富士フイルム製コンパクトカメラにはISO100とISO400の感度を自動設定できる独自の2接点式検知機構が採用されていました。そのため、移行期間として、フジカラー400系、フジクローム400系、ネオパン400系のパトローネには、DXコードの接点と並列して独自の接点が設けられていました。

カメラ側の接点

DXコード対応カメラには、DXコードを読み取るための接点がフィルム室に備わっています。ただし、必ずしもすべての接点を備えているわけではなく、多くのコンパクトカメラでは感度情報のみを読み取り、枚数情報やラティチュード情報は無視されることが一般的です。枚数情報を利用するのは、一部の一眼レフカメラなどに限られます。

DX非対応のフィルムを装填した場合、本来はカメラ側でそれを検知し、手動設定を促す必要があります。しかし、多くのコンパクトカメラではDX非対応フィルムをISO100として設定し、手動設定もできないことがあります。

また、接点は板バネ状になっているため、フィルムパトローネを押し戻してしまい、フィルムの装填がしづらいという欠点があります。このため、裏蓋を閉じるまで接点を収納する仕組みや、カメラ底部からパトローネを滑り込ませる機構を持つ機種も存在します。

DXコード接点採用例

詰め替え用パトローネ

長巻フィルムを詰め替えるためのパトローネにもDXコード付きのものが存在します。しかし、この場合、パトローネのDX情報と異なるフィルムを装填してしまうと、間違った感度で撮影したり、フィルムが途中で巻き戻されるなどの問題が発生する可能性があります。そのため、DXコードがプリントされた金属製シールが添付、または別売りされていることがあります。

DXコードは、フィルムカメラの自動化に大きく貢献した技術であり、現代でもその役割を果しています。

もう一度検索